驢鞍橋 / 卷下
一日、去る醫者來て修行の用心を問ふ。師示めして曰く、別に用心なし、醫者の仕樣を敎へ申すべし。先つ我は世界の病人を救へとの天道の仰付也。此の役人ずと思ひ定め、身心を世界に抛て、藥代のことをも、何ことをも思はす、只天道に任せ奉り、一筋に醫を施さるべし。然らば又命をつなく分は、必す天道の擬有るべし。如是勤められば、機の熟するに隨て、必す德有るべしと也。
新字:一日、去る医者来て修行の用心を問ふ。師示めして曰く、別に用心なし、医者の仕様を教へ申すべし。先つ我は世界の病人を救へとの天道の仰付也。此の役人ずと思ひ定め、身心を世界に抛て、薬代のことをも、何ことをも思はす、只天道に任せ奉り、一筋に医を施さるべし。然らば又命をつなく分は、必す天道の擬有るべし。如是勤められば、機の熟するに随て、必す徳有るべしと也。
書き下し
一日、去る医者来て修行の用心を問ふ。師示めして曰く、別に用心なし、医者の仕様を教へ申すべし。先つ我は世界の病人を救へとの天道の仰付也。此の役人ずと思ひ定め、身心を世界に抛て、薬代のことをも、何ことをも思はす、只天道に任せ奉り、一筋に医を施さるべし。然らば又命をつなく分は、必す天道の擬有るべし。如是勤められば、機の熟するに随て、必す徳有るべしと也。
現代語訳
ある日、ある医者が来て、修行の心得を尋ねた。師は示して言われた。別に心得はない。医者のやり方を教えて差し上げよう。まず、自分は世界の病人を救えという天道の仰せつけを受けた者である。この役人だと思い定め、身も心も世界に投げ打って、薬代のことも何のことも思わず、ただ天道にお任せして、一筋に医を施されるがよい。そうすれば、また命をつなぐ分は、必ず天道のはからいがあるだろう。このように勤められれば、気迫が熟するに従って、必ず徳があるだろう、と。
解説

人生を、一行の式にしてみた。
志×積×時×憤÷(1+執)+命。古典から導いた式『人生の方程式』と、二十四の悩みに古典が答える『人生の教科書』(PDF)、師導の全機能1か月がセットで700円です。
本の中身を見るこの章句が説くこと
関連する章句
-
『初学訓』巻之一一凡人は天地のめぐみをうけて生れ、天地の心をうけて心とし、天地の養を得て身をやしなふ。かかる天地の大恩をうけて、天地の内に住みながら、天地のわれにあたへ給へる心の徳を捨てて保たず。天地の道にそむきて行はず。其上、天地の、子としてあはれみ給へる人倫と、次には鳥獣をそこなひ苦めて不仁なるは、天地の御心にそむきて、罪深し。是天地のにくみ給ふ所なり。天道は恐るべし、侮りて背くべからず。一人として、天をおそれず人をあはれまず、悪これより大なるはなし。悪を行へば天のにくみ給ふ所、天の譴のがれがたし。即時にわざはひあると、後に禍来るとのかはりあれども、悪をなして禍なきの理なし。又天地の御心に従ひて背かざる人は、天地のめぐみありて、必ず福あり。もしは、其福早く来らざれども、後必ず福有りて禍なし。もし我が身に福なければ、必ず子孫にいたりて福あり。是必然の理なり。古の聖人の教明らかなり。聖人の言おそるべし、信ずべし、疑ふべからず。古を引くにも及ばず、近世にも此ためし多し。
-
『益軒家訓』幼児須教一凡我子孫たらんもの、一生の心法真実にして私曲なく、人に愛敬有て、忿を懲し慾を窒ぎ、善に移り過を改め、常に天道を恐れ敬ふべし。必おろそかに侮る事なかれ。人の一生の勤は、唯天道に仕へ奉るべきなり。天理は学問して知るべし。又正敷神明を敬ふべし。神に諂ひ瀆して、猥に幸福を求むる事なかれ。神は非礼をうけ給はねば、道なくて幸を祈るに、必験なし。人の義を務めずして神に求むるは、神の御心に違ひ、助なくて責あり。いたつて愚なるなり。或云、心だに誠の道にかなひなば、祈らずとても神や守らん。
-
『呻吟語』内篇・問學・胸中獨り得たる中正の道理學問の大要は、須らく天道・人情・物理・世故を把りて識得すること透徹し、卻って胸中獨り得たる中正底の道理を以て之を消息すべし。
-
『翁問答』上卷之末師の曰、よき不審にて候、それは易学をよくきはめざれば、合点ゆきかぬる所にて候へども大かたをかたり候はん、夫賢人君子鳳凰麒麟などを善とさだめ、愚痴不肖鳶狐狸などを悪とさだめ、善悪の二字にてさたし、それをそのまゝ天道におしあてがふによつて一しほうたがひまし候、先根本をよく考へ見て、さて枝葉をよく吟味したるがよく候、天道を根本として生れ出たる万物なれば、天道は人物の大父母にして根本なり、人物は天道の子孫にして枝葉なり根本の天道純粋至善なれば、その枝葉の人物もみな善にして悪なしと得心すべし、瓜づるに茄子はならぬといへるが如し、
-
『慎思録』巻之二天道は運りて息む無く、四時行はれ、百物生ず。天地の道は私無し。万古易はらず、終天改まらざる所以なり。人心は私有り。故に天地の道と相似ること能はず。澆漓の時に迨ぶ所以にして、人心世道漸く変じて、衰へを増すなり。
-
『慎思録』巻之六地は天気の中に在りて、常に天の施しを順承して、万物を育成す。是れ地も亦天中の一物にして、地の生育する所も、亦是れ天の為す所なり。故に天道を言へば、則ち地道は亦言はずして、其の中に在り。