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驢鞍橋 / 卷上

一日塔婆を書し玉ふ次て、愕然として云はく、扨もたわけた事哉。我も人も皆如是ならんずが、何としても無く成らうやうに思はれぬもの也。

書き下し

一日塔婆を書し玉ふ次て、愕然として云はく、扨もたわけた事哉。我も人も皆如是ならんずが、何としても無く成らうやうに思はれぬもの也。

現代語訳

ある日、塔婆を書かれたついでに、はっとして言われた。なんともたわけたことだ。自分も人もみなこのようになるのだろうに、どうしても無くなるようには思えないものだ、と。

解説

死者のための塔婆を書きながら、正三ははっと気づく。自分も周りの人も、いずれこうして塔婆を立てられる身なのに、どうしても自分が消えるとは実感できない、と。死を知識として知っていることと、自分のこととして実感することの隔たりを、率直に言い当てている。日々葬儀に関わる僧でさえそうなのだから、普段死を意識しない人はなおさらである。自分の終わりを実感できない心の不思議さを見つめる短い条である。

この章句が説くこと

実感塔婆無常自覚不思議

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