驢鞍橋 / 卷上
夜話の次て去る人一言法談に、大善知識も德大なるは後世の怨也と有りと云ふ。師聞て曰、然るべき事也。得法の人も善き事には樂み有るべし、何としても寳と成らんず。一言法談には殊勝の事有りけるよ。我好き事を聞きたりと也。
新字:夜話の次て去る人一言法談に、大善知識も徳大なるは後世の怨也と有りと云ふ。師聞て曰、然るべき事也。得法の人も善き事には楽み有るべし、何としても宝と成らんず。一言法談には殊勝の事有りけるよ。我好き事を聞きたりと也。
書き下し
夜話の次て去る人一言法談に、大善知識も徳大なるは後世の怨也と有りと云ふ。師聞て曰、然るべき事也。得法の人も善き事には楽み有るべし、何としても宝と成らんず。一言法談には殊勝の事有りけるよ。我好き事を聞きたりと也。
現代語訳
夜話のついでに、ある人が、『一言法談』に、大善知識でも徳が大きいのは後世の怨である、とあります、と言った。師は聞いて言われた。もっともなことだ。法を得た人も、良いことには楽しみがあるだろう。どうしても宝となってしまうだろう。『一言法談』には殊勝なことがあったのだな。良いことを聞いた、と。
解説
鎌倉時代の念仏者たちの言葉を集めた『一言芳談』に、立派な師でも徳が大きすぎるのは後世のあだになる、とある、と聞いて正三は深く同意する。法を得た人も、その徳を楽しみ、宝のように抱えてしまうからだ、と。成功や名声、人望さえも、それに執着すれば修行の妨げになる。優れた実績を持つ人ほど、その実績を宝物のように抱え込み、次の歩みを止めてしまう危うさを、短い会話が鋭く突いている。

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本の中身を見るこの章句が説くこと
一言芳談徳執着名声善知識戒め
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