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驢鞍橋 / 卷上

一日近比の遁世者に示して曰く、如何樣なる者も頭をすれば、早打上つて人に貴はれ、殊勝に成り、賣僧に成り、德有る御坊主の振をする也。今時の道心者皆此つれ計り也。其方も我法によらんと思はゞ、一向の土に成り、謙つて向上に眼を著けす、足元より修すべし。なまけた振をし、さも無き事を鼻に上げてありかんと思はゞ、出入無用也。

新字:一日近比の遁世者に示して曰く、如何様なる者も頭をすれば、早打上つて人に貴はれ、殊勝に成り、売僧に成り、徳有る御坊主の振をする也。今時の道心者皆此つれ計り也。其方も我法によらんと思はゞ、一向の土に成り、謙つて向上に眼を著けす、足元より修すべし。なまけた振をし、さも無き事を鼻に上げてありかんと思はゞ、出入無用也。

書き下し

一日近比の遁世者に示して曰く、如何様なる者も頭をすれば、早打上つて人に貴はれ、殊勝に成り、売僧に成り、徳有る御坊主の振をする也。今時の道心者皆此つれ計り也。其方も我法によらんと思はゞ、一向の土に成り、謙つて向上に眼を著けす、足元より修すべし。なまけた振をし、さも無き事を鼻に上げてありかんと思はゞ、出入無用也。

現代語訳

ある日、近ごろ出家した遁世者に示して言われた。どんな者でも頭を剃れば、すぐに舞い上がって人に尊ばれ、殊勝になり、売僧になり、徳のある御坊主のふりをする。今の道心者はみなこの類ばかりである。あなたも私の法によろうと思うなら、ただの素人になり、へりくだって、高いところに目をつけず、足元から修めなさい。なまけたふりをし、ありもしないことを鼻にかけて歩き回ろうと思うなら、出入りは無用である、と。

解説

頭を剃ったとたんに、徳の高い僧のようにふるまい始める者たちを、正三は痛烈に批判する。形を整えると中身まで備わったように錯覚し、周囲にも尊ばれて舞い上がってしまう。資格を取った、役職に就いたという瞬間に、同じことが起こりやすい。高いところに目をつけず、足元から修めよ、という言葉は、肩書きを得た直後の人への最良の忠告である。へりくだった素人の構えこそが、実力を育てる土台になる。

この章句が説くこと

足元謙虚形骸肩書き売僧初心

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