師導古典を学びたいすべての人に

葉隠 / 聞書第一

少し理窟などを合點したる時は、頓て高慢して、我今の世間に合はぬ生附などと云ひて、我が上あらじと思ふは、天罰あるべきなり。何様の能事持ちたりとも、人の好かぬ者は役に立たず。御用に立つ事、奉公する事には好きて、随分へりくだり、朋輩の下に居るを悦ぶ心入の者は、諸人嫌はぬものなり。「さて〳〵ふりある祕藏の者共。」

新字:少し理窟などを合点したる時は、頓て高慢して、我今の世間に合はぬ生附などと云ひて、我が上あらじと思ふは、天罰あるべきなり。何様の能事持ちたりとも、人の好かぬ者は役に立たず。御用に立つ事、奉公する事には好きて、随分へりくだり、朋輩の下に居るを悦ぶ心入の者は、諸人嫌はぬものなり。「さて〳〵ふりある秘蔵の者共。」

書き下し

少し理窟(りくつ)などを合点(がてん)したる時は、頓(やが)て高慢(こうまん)して、我今の世間に合はぬ生附(うまれつき)などと云ひて、我が上(うえ)あらじと思ふは、天罰あるべきなり。何様(いかよう)の能事(のうじ)持ちたりとも、人の好かぬ者は役に立たず。御用に立つ事、奉公する事には好きて、随分(ずいぶん)へりくだり、朋輩(ほうばい)の下に居るを悦ぶ心入(こころいれ)の者は、諸人(しょにん)嫌はぬものなり。「さてさて振(ふ)りある秘蔵(ひぞう)の者共(ものども)。」

現代語訳

少し理屈をわきまえた程度で、すぐに高慢になり、「自分は今の世間には合わない生まれつきだ」などと言って、自分より上の者はいないと思い上がるのは、天罰を受けるだろう。どれほどの才能を持っていても、人に好かれない者は役に立たない。御用を務めること、奉公することを好み、十分にへりくだって、仲間より下の位置にいることを喜ぶような心根の者は、誰からも嫌われない。「いやはや、見どころのある大切な者たちだ」(と言われる)。

解説

才能よりも人柄と謙虚さを重んじる一節です。少し物を知った程度で高慢になり、「自分は世に合わない特別な人間だ」と思い上がる態度を、天罰を招くものとして厳しく戒めます。どんな才があっても、人に好かれなければ組織では役に立たない、という現実的な指摘は今日でも変わりません。反対に、務めを好み、へりくだって仲間の下にいることを喜べる人は、皆から好かれ、結局は大切にされます。ここで説かれるのは卑屈さではなく、才を鼻にかけない素直さと協調の心です。現代でも、能力が高くても傲慢な人は敬遠され、実力を活かせません。謙虚さこそが才能を生かす土台になる、という普遍的な教訓として受け取れます。

この章句が説くこと

謙虚高慢の戒め人柄協調才能と人望素直さ

関連する章句

この一句を、あなたの毎日に。

古典の教えを、今の状況に当てはめて考えてみる——師導があなたの学びと選択を支えます。

師導で古典を学ぶ
いま登録すると、7日間すべての機能を無料でお試しいただけます。 無料ではじめる