李衛公問対 / 卷中
『以近待遠,以佚待勞,以飽待飢』
新字:『以近待遠,以佚待労,以飽待飢』
書き下し
『近きを以て遠きを待ち、佚を以て労を待ち、飽を以て飢を待つ』
現代語訳
「近くにいる有利さで遠くから来る相手を迎え、休養の充実で疲労した相手を迎え、満腹の余裕で飢えた相手を迎える」
解説
『孫子』に由来するこの言葉を、李靖は基本戦術の要として引く。距離・体力・食糧という三つの相対的な優位を保ったまま相手を待つという発想である。仕事でも、遠方から駆けつけて疲れている相手や、準備不足のまま臨む場面では、地の利や余力を持つ側が有利になりやすい。自分から無理に動いて消耗するより、整った状態で相手を迎える体勢を作れているかどうかが、勝負の分かれ目になることは少なくない。
この章句が説くこと
優位余力待機
関連する章句
-
孫子・行軍篇之を令するに文を以てし、之を斉うるに武を以てす。是を必取と謂う。
-
孫子・行軍篇丘陵堤防には、必ず其の陽に処りて、之を右背にす。此れ兵の利、地の助けなり。上に雨ふり、水沫至らば、渉らんと欲する者は、其の定まるを待て。
-
李衛公問対・卷中誘うを以て来るを待ち、静を以て躁を待ち、重きを以て軽きを待ち、厳を以て懈を待ち、治を以て乱を待ち、守を以て攻を待つ。
-
孫子・形篇孫子曰く、昔の善く戦う者は、まず不可勝を為して、以て敵の可勝を待つ。
-
『墨子』天志下曰く、力正なる者は何若ん。曰く、大なれば則ち小を攻むるなり、强なれば則ち弱を侮るなり、衆なれば則ち寡を賊うなり、詐なれば則ち愚を欺くなり、貴なれば則ち賤に傲るなり、富なれば則ち貧に驕るなり、壯なれば則ち老を奪うなり。是を以て天下の庶國、方に水火毒藥兵刃を以て以て相い賊害するなり。若の事、上は天に利あらず、中は鬼に利あらず、下は人に利あらず。三つながら利あらずして利する所無し。是れを天賊と謂う。故に凡そ此に從事する者は、冦亂なり、盜賊なり、不仁不義、不忠不惠、不慈不孝なり。是の故に天下の惡名を聚斂して之に加う。是れ其の故は何ぞや。則ち天の意に反すればなり。
-
孫子・虚実篇吾の与に戦う所の地知るべからざれば、知るべからざれば則ち敵の備うる所の者多く、敵の備うる所の者多ければ、則ち吾の与に戦う所の者寡なし。