列子 / 説符篇
人有亡鈇者、意其鄰之子、視其行步、竊鈇也、顏色、竊鈇也、言語、竊鈇也:動作態度、無爲而不竊鈇也。俄而抇其谷而得其鈇、他日復見其鄰人之子、動作態度無似竊鈇者。
新字:人有亡鈇者、意其鄰之子、視其行歩、竊鈇也、顏色、竊鈇也、言語、竊鈇也:動作態度、無為而不竊鈇也。俄而抇其谷而得其鈇、他日復見其鄰人之子、動作態度無似竊鈇者。
書き下し
人に鈇を亡う者有り。其の鄰の子を意う。其の行步を視るに、鈇を竊めるなり。顏色も、鈇を竊めるなり。言語も、鈇を竊めるなり。動作態度、爲すとして鈇を竊まざるは無きなり。俄かにして其の谷を抇りて其の鈇を得たり。他日復た其の鄰人の子を見るに、動作態度に鈇を竊める者に似たる無し。
現代語訳
斧をなくした者がいた。隣の家の子を疑った。その歩き方を見れば、斧を盗んだ者そのものである。顔つきも、斧を盗んだ者そのもの。言葉つきも、斧を盗んだ者そのもの。振る舞いも態度も、斧を盗んだ者でないところがない。まもなく谷を掘り返して斧が出てきた。後日、また隣の家の子を見ると、振る舞いも態度も、斧を盗んだ者に似たところがなかった。
解説
疑いを持った瞬間、相手のすべてが証拠に見える。歩き方も、顔つきも、言葉つきも。そして斧が出てきた途端、何も似ていなくなった。相手は最初から最後まで何も変わっていません。変わったのはこちらの目だけです。七十八字で、確証バイアスの全体が描かれています。人事評価でも取引先との関係でも、いったん疑いが入ると、その後の観察はすべて疑いを補強する材料になります。しかも本人には、観察しているつもりでいる。この話が二千年以上残っているのは、誰もこれを免れないからでしょう。
この章句が説くこと
其の鄰の子を意う動作態度為すとして鈇を竊まざるは無し其の鈇を得たり竊める者に似たる無し先入観
関連する章句
-
呂氏春秋・去尤②人、鈇を亡う者有り。其の鄰の子を意う。其の行歩を視るに鈇を竊むなり。顏色も鈇を竊むなり。言語も鈇を竊むなり。動作態度、為して鈇を竊まざる無きなり。其の谷を相て、其の鈇を得。他日復た其の鄰の子を見るに、動作態度、鈇を竊むに似たる者無し。其の鄰の子、變ずるに非ざるなり。己則ち變ずるなり。變ずる者は他無し。尤せらるる所有ればなり。
-
『列子』説符篇昔齊人に金を欲する者有り。清旦に衣冠して市に之く。鬻金者の所に適き、因りて其の金を攫みて去る。吏捕らえて之を得たり。問いて曰く、人皆な焉に在り。子人の金を攫むは何ぞや、と。對えて曰く、金を取るの時、人を見ず、徒だ金を見るのみ、と。
-
『列子』説符篇宋人に道に游びて、人の遺せる契を得る者有り。歸りて之を藏し、密かに其の齒を數え、鄰人に告げて曰く、吾が富待つべし、と。
-
呂氏春秋・去宥③人の人と鄰する者有り。枯れたる梧樹有り。其の鄰の父、梧樹の善からざるを言うや、鄰人遽に之を伐る。鄰の父因りて請いて以て薪と為す。其の人悦ばずして曰く、「鄰者此くの若く其れ險なり。豈に之が鄰為る可けんや。」此れ宥せらるる所有るなり。夫れ請いて以て薪と為すと請わざるとは、此を以て枯れたる梧樹の善きと善からざるとを疑う可からざるなり。齊人に金を得んと欲する者有り。清旦、衣冠を被り、金を鬻ぐ者の所に往き、人の金を操るを見て、攫みて之を奪う。吏搏えて之を束縛し、問いて曰く、「人皆焉に在り。子、人の金を攫めるは、何の故ぞ。」吏に對えて曰く、「殊に人を見ず、徒だ金を見るのみ。」此れ真に大いに宥せらるる所有るなり。夫れ人宥せらるる所有る者は、固より晝を以て昏と為し、白を以て黑と為し、堯を以て桀と為す。宥の敗を為すこと亦た大なり。亡國の主は、其れ皆甚だ宥せらるる所有るか。故に凡そ人は必ず宥を別ちて然る後知る。宥を別てば則ち能く其の天を全うす。
-
『列子』説符篇人に枯梧の樹有る者あり。其の鄰の父枯梧の樹は不祥なりと言う。其の鄰人遽かにして之を伐る。鄰人の父因りて請いて以て薪と爲す。其の人乃ち悅ばずして曰く、鄰人の父は徒だ薪と爲さんと欲して吾に之を伐らしめしなり。我と鄰たりて、此くの若く其れ險なるは、豈に可ならんや、と。
-
『列子』説符篇白公勝亂を慮り、朝を罷めて立つ。杖策を倒にし、錣上りて頤を貫く。血流れて地に至るも知らざるなり。鄭人之を聞きて曰く、頤すら之れ忘る。將た何をか忘れざらんや、と。意の屬著する所あれば、其の行くや足は株埳に躓き、頭は植木に抵るとも、自ら知らざるなり。