列子 / 説符篇
胡子曰:「富子之言非也。凡人有術不能行者有矣、能行而無其術者亦有矣。衛人有善數者、臨死、以決喻其子。其子志其言而不能行也、他人問之、以其父所言告之。問者用其言而行其術、與其父無差焉。若然、死者奚爲不能言生術哉?」
新字:胡子曰:「富子之言非也。凡人有術不能行者有矣、能行而無其術者亦有矣。衛人有善数者、臨死、以決喻其子。其子志其言而不能行也、他人問之、以其父所言告之。問者用其言而行其術、与其父無差焉。若然、死者奚為不能言生術哉?」
書き下し
胡子曰く、富子の言は非なり。凡そ人に術有りて行う能わざる者有り。能く行いて其の術無き者も亦た有り。衛人に善く數する者有り。死に臨みて、決を以て其の子に喻す。其の子は其の言を志すも行う能わざるなり。他人之を問う。其の父の言う所を以て之に告ぐ。問う者其の言を用いて其の術を行うに、其の父と差う無し。若し然らば、死者は奚爲れぞ生の術を言う能わざらんや、と。
現代語訳
胡子は言った。「富子の言葉は誤りだ。およそ人には、術を持っていながら行えない者がいる。行えるのに術を持たない者もまたいる。衛の人に計算の得意な者がいた。死に臨んで、その要領を子に教えた。子はその言葉を書き留めたが、実行できなかった。他人がそれを尋ねた。子は父の言ったことをそのまま伝えた。尋ねた者はその言葉を用いて術を行い、その父と少しも違わなかった。そうであれば、死んだ者がどうして生きる術を語れないことがあろうか」。
解説
術を持っていて行えない人と、行えるのに術を持たない人がいる。この二つを分けたところに、この段の値打ちがあります。そして計算の名人の例が置かれます。父から子へ伝わった要領は、子には使えず、それを又聞きした他人には使えた。伝える人、受け取る人、実行する人がすべて別でも、術は働いた。だから「死者は奚爲れぞ生の術を言う能わざらんや」――説く人がそれを実現していなくても、術そのものは有効でありうる。組織の知識継承にそのまま当てはまります。書いた人が実行できなかった手順書が、別の人には使えることがある。
この章句が説くこと
術有りて行う能わざる者有り能く行いて其の術無き者も亦た有り其の父と差う無し死者は奚為れぞ生の術を言う能わざらん
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