列子 / 説符篇
宋有蘭子者、以技干宋元、宋元召而使見。其技以雙枝、長倍其身、屬其踁、並趨並馳、弄七劍迭而躍之、五劍常在空中。元君大驚、立賜金帛。又有蘭子又能燕戲者、聞之、復以干元君。元君大怒曰:「昔有異技干寡人者、技無庸、適值寡人有歡心、故賜金帛。彼必聞此而進、復望吾賞。」拘而擬戮之、經月乃放。
新字:宋有蘭子者、以技干宋元、宋元召而使見。其技以双枝、長倍其身、属其踁、並趨並馳、弄七剣迭而躍之、五剣常在空中。元君大驚、立賜金帛。又有蘭子又能燕戯者、聞之、復以干元君。元君大怒曰:「昔有異技干寡人者、技無庸、適值寡人有歓心、故賜金帛。彼必聞此而進、復望吾賞。」拘而擬戮之、経月乃放。
書き下し
宋に蘭子なる者有り。技を以て宋元に干む。宋元召して見えしむ。其の技は雙枝を以てす。長さは其の身に倍す。其の踁に屬け、並び趨り並び馳せ、七劍を弄びて迭いに之を躍らす。五劍は常に空中に在り。元君大いに驚き、立ちどころに金帛を賜う。又た蘭子に又た能く燕戲する者有り。之を聞き、復た以て元君に干む。元君大いに怒りて曰く、昔異技を以て寡人に干む者有り。技は庸うる無し。適々寡人の歡心有るに値う。故に金帛を賜えり。彼は必ず此を聞きて進み、復た吾が賞を望むならん、と。拘えて之を戮せんと擬す。月を經て乃ち放つ。
現代語訳
宋に蘭子という者がいた。芸によって宋の元君に売り込んだ。元君は召し出して見せさせた。その芸は二本の棒を使うものである。長さは自分の背丈の二倍。それを脛に取りつけ、並んで走り並んで駆け、七本の剣を操って交互に跳ね上げる。五本の剣が常に空中にあった。元君は大いに驚き、その場で金と絹を与えた。またもう一人の蘭子で、燕のように身をひるがえす芸ができる者がいた。それを聞いて、同じように元君に売り込んだ。元君は大いに怒って言った。「以前、変わった芸でわしに売り込んだ者がいた。芸そのものは役に立たない。たまたまわしが機嫌のよいときに当たった。だから金と絹を与えたのだ。あの者はこれを聞いてやって来て、また褒美を望むのだろう」。捕らえて殺そうとし、一か月たってようやく釈放した。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
-
『列子』天瑞篇齊の國氏は大いに富み、宋の向氏は大いに貧し。宋より齊に之き、其の術を請う。國氏之に告げて曰く、吾は善く盜を爲す。始め吾盜を爲すや、一年にして給し、二年にして足り、三年にして大いに穰なり。此れより往、施して州閭に及ぶ、と。向氏大いに喜ぶ。其の盜を爲すの言を喩りて、其の盜を爲すの道を喩らず。遂に垣を踰え室を鑿ち、手目の及ぶ所、探らざる亡し。未だ時に及ばずして、贓を以て罪を獲、其の先に居る所の財を沒せらる。
-
『列子』説符篇宋人に其の君の爲に玉を以て楮の葉を爲る者有り。三年にして成る。鋒殺莖柯、毫芒繁澤、之を楮の葉の中に亂すも別つべからざるなり。此の人遂に巧を以て宋國に食む。子列子之を聞きて曰く、天地の物を生ずるをして、三年にして一葉を成さしめば、則ち物の葉有る者寡なからん。故に聖人は道化を恃みて智巧を恃まず、と。
-
『列子』説符篇魯の施氏に二子有り。其の一は學を好み、其の一は兵を好む。學を好む者は術を以て齊侯に干む。齊侯之を納れ、以て諸公子の傅と爲す。兵を好む者は楚に之き、法を以て楚王に干む。王之を悅び、以て軍正と爲す。祿は其の家を富ませ、爵は其の親を榮えしむ。施氏の鄰人孟氏も同じく二子有り。業とする所も亦た同じ。而るに貧に窘む。施氏の有るを羨み、因りて從いて進趨の方を請う。二子實を以て孟氏に告ぐ。
-
『列子』説符篇孟氏の一子秦に之き、術を以て秦王に干む。秦王曰く、當今諸侯力もて爭う。務むる所は兵食のみ。若し仁義を用いて吾が國を治めば、是れ滅亡の道なり、と。遂に宮して之を放つ。其の一子衛に之き、法を以て衛侯に干む。衛侯曰く、吾は弱國なり。而して大國の間に攝まる。大國は吾之に事え、小國は吾之を撫す。是れ安きを求むるの道なり。若し兵權に賴らば、滅亡待つべし。若し全うして之を歸さば、他國に適き、吾が患いと爲ること輕からず、と。遂に之を刖して、諸を魯に還す。
-
荘子・説剣荘子殿門に入りて趨(はし)らず、王に見えて拝せず。王曰く、「子は何を以て寡人に教えんと欲して、太子をして先んぜしむるか」と。曰く、「臣は大王の剣を喜むを聞く。故に剣を以て王に見ゆ」と。王曰く、「子の剣は何をか能く禁制する」と。曰く、「臣の剣は、十歩に一人、千里に行を留めず」と。王大いに之を悦びて曰く、「天下に敵無きなり」と。荘子曰く、「夫れ剣を為す者は、之に示すに虚を以てし、之を開くに利を以てし、之に後(おく)れて発し、之に先んじて至る。願わくは之を試むるを得ん」と。王曰く、「夫子休して舎に就け。命令を待ちて戯(ぎ)を設け、夫子を請わん」と。王乃ち剣士を校(くら)ぶること七日、死傷する者六十余人。五六人を得て、剣を殿下に奉ぜしめ、乃ち荘子を召す。王曰く、「今日、試みに士をして剣を敦(きそ)わしめん」と。荘子曰く、「之を望むこと久し」と。王曰く、「夫子の御する所の杖、長短は何如」と。曰く、「臣の奉ずる所は皆な可なり。然れども臣に三剣有り。唯だ王の用うる所なり。請う、先ず言いて後に試みん」と。
-
『列子』説符篇昔人に不死の道を知ると言う者有り。燕君人をして之を受けしむるも、捷からずして、言う者死す。燕君甚だ怒り、其の使者に將に誅を加えんとす。幸臣諫めて曰く、人の憂うる所は死より急なるは莫し。己の重んずる所は生に過ぐるは莫し。彼自ら其の生を喪う。安んぞ能く君をして死せざらしめんや、と。乃ち誅せず。齊子なる者有り、亦た其の道を學ばんと欲す。言う者の死せるを聞き、乃ち膺を撫して恨む。富子聞きて之を笑いて曰く、夫れ學ばんと欲する所は不死なり。其の人已に死せるに猶お之を恨むは、是れ學を爲す所以を知らざるなり、と。