列子 / 天瑞篇
齊之國氏大富、宋之向氏大貧、自宋之齊、請其術。國氏告之曰:「吾善爲盜。始吾爲盜也、一年而給、二年而足、三年大穰。自此以往、施及州閭。」向氏大喜。喻其爲盜之言、而不喻其爲盜之道、遂踰垣鑿室、手目所及、亡不探也。未及時、以贓獲罪、沒其先居之財。
新字:斉之国氏大富、宋之向氏大貧、自宋之斉、請其術。国氏告之曰:「吾善為盗。始吾為盗也、一年而給、二年而足、三年大穰。自此以往、施及州閭。」向氏大喜。喻其為盗之言、而不喻其為盗之道、遂踰垣鑿室、手目所及、亡不探也。未及時、以贓獲罪、没其先居之財。
書き下し
齊の國氏は大いに富み、宋の向氏は大いに貧し。宋より齊に之き、其の術を請う。國氏之に告げて曰く、吾は善く盜を爲す。始め吾盜を爲すや、一年にして給し、二年にして足り、三年にして大いに穰なり。此れより往、施して州閭に及ぶ、と。向氏大いに喜ぶ。其の盜を爲すの言を喩りて、其の盜を爲すの道を喩らず。遂に垣を踰え室を鑿ち、手目の及ぶ所、探らざる亡し。未だ時に及ばずして、贓を以て罪を獲、其の先に居る所の財を沒せらる。
現代語訳
斉の国氏は大金持ちで、宋の向氏はひどく貧しかった。向氏は宋から斉へ出かけて、その方法を教えてくれと頼んだ。国氏は言った。「私は盗みがうまいのだ。盗みを始めて、一年で暮らしが立ち、二年で足り、三年で大豊作になった。それから先は、施しが村じゅうに及ぶようになった」。向氏は大いに喜んだ。だが彼が理解したのは「盗む」という言葉だけで、盗むという道のほうは理解しなかった。そこで塀を越え、家に穴をあけ、手と目の届くかぎり探らないところはなかった。いくらもたたぬうちに、盗品のせいで罪に問われ、もともと持っていた財産まで没収された。
解説
「盗みの言葉は分かったが、盗みの道は分からなかった」。この一行がすべてです。同じ言葉を聞いて、片方は仕組みを受け取り、片方は行為だけを受け取った。成功者の話を聞きに行く人が、たいていここでつまずきます。何をしたかは言葉になりますが、なぜそれが成り立つかは言葉になりにくい。しかも語る側は、自分にとって当たり前になった前提をわざわざ言いません。国氏は嘘をついていないし、隠してもいない。向氏は真剣に聞いて、真剣に実行した。それでも財産を失った。他社の施策をそのまま持ち込んで失敗する事例は、ほぼ例外なくこの形をしています。聞くべきは手口ではなく、その手口が成立している条件のほうです。
この章句が説くこと
吾善く盗を為す盗を為すの言を喩りて其の道を喩らず贓を以て罪を獲
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