列子 / 説符篇
宋人有好行仁義者、三世不懈。家無故黑牛生白犢、以問孔子。孔子曰:「此吉祥也、以薦上帝。」居一年、其父無故而盲。其牛又復生白犢、其父又復令其子問孔子。其子曰:「前問之而失明、又何問乎?」父曰:「聖人之言先迕後合。其事未究、姑復問之。」其子又復問孔子。孔子曰:「吉祥也。」復教以祭。
新字:宋人有好行仁義者、三世不懈。家無故黒牛生白犢、以問孔子。孔子曰:「此吉祥也、以薦上帝。」居一年、其父無故而盲。其牛又復生白犢、其父又復令其子問孔子。其子曰:「前問之而失明、又何問乎?」父曰:「聖人之言先迕後合。其事未究、姑復問之。」其子又復問孔子。孔子曰:「吉祥也。」復教以祭。
書き下し
宋人に仁義を行うを好む者有り。三世懈らず。家に故無くして黑牛白犢を生む。以て孔子に問う。孔子曰く、此れ吉祥なり。以て上帝に薦めよ、と。居ること一年、其の父故無くして盲す。其の牛又た復た白犢を生む。其の父又た復た其の子をして孔子に問わしむ。其の子曰く、前に之を問いて明を失う。又た何ぞ問わんや、と。父曰く、聖人の言は先には迕い後には合す。其の事未だ究まらず。姑く復た之を問え、と。其の子又た復た孔子に問う。孔子曰く、吉祥なり、と。復た教うるに祭を以てす。
現代語訳
宋の人に、仁義を行うのを好む者がいた。三代にわたって怠らなかった。家で、理由もなく黒い牛が白い子牛を生んだ。そのことを孔子に尋ねた。孔子は言った。「これはめでたいしるしだ。上帝に供えなさい」。一年たって、その父が理由もなく目が見えなくなった。その牛がまた白い子牛を生んだ。父はまた子に孔子へ尋ねさせようとした。子は言った。「前に尋ねて目が見えなくなったのに、また尋ねるのですか」。父は言った。「聖人の言葉は、先には食い違って後で合うものだ。この事はまだ終わっていない。ひとまずもう一度尋ねなさい」。子はまた孔子に尋ねた。孔子は言った。「めでたいしるしだ」。そしてまた祭れと教えた。
解説
吉兆だと言われた翌年に父が失明する。子が「もう聞かないでいい」と言うのに、父は「聖人の言葉は先に食い違って後で合う」と言って、もう一度尋ねさせます。この父の姿勢が、この話の要です。予測が外れたように見えたとき、予測を捨てるか、まだ途中だと考えるか。ふつうは捨てるのが正しい。ただしこの話では、まだ途中でした。判断の難しいところは、どちらが正しいかを事前に決められないことです。次の段で結末が来ますが、そこで問われるのは孔子の的中率ではありません。
この章句が説くこと
黒牛白犢を生む此れ吉祥なり聖人の言は先には迕い後には合す
関連する章句
-
『列子』説符篇其の子歸りて命を致す。其の父曰く、孔子の言を行え、と。居ること一年、其の子も又た故無くして盲す。其の後楚宋を攻め、其の城を圍む。民は子を易えて之を食らい、骸を析きて之を炊ぐ。丁壯なる者は皆な城に乘りて戰い、死者太半なり。此の人は父子に疾有るを以て皆な免る。圍解くるに及びて疾俱に復す。
-
荘子・列禦寇或るひと荘子を聘(へい)す。荘子其の使に応えて曰く、「子は夫の犠牛(ぎぎゅう)を見るか。衣(き)するに文繡(ぶんしゅう)を以てし、食らわしむるに芻叔(すうしゅく)を以てす。其の牽かれて太廟に入るに及びて、孤犢(ことく)と為らんと欲すと雖も、其れ得べけんや」と。
-
孔子家語・好生魯の公索氏、将に祭らんとして其の牲を亡う。孔子之を聞きて曰わく、「公索氏二年に及ばずして将に亡びんとす、後一年にして亡ぶ。」門人問いて曰わく、「昔公索氏其の祭牲を亡いしとき、而して夫子曰わく、二年に及ばずして必ず亡びんと、今期を過ぎて亡ぶ、夫子何を以て其の然るを知るや。」孔子曰わく、「夫れ祭る者は、孝子の以て其の親に自ら尽くす所以なり、将に祭らんとして其の牲を亡う、則ち其の余の亡う所の者多し。此くの如くにして亡びざる者は、未だ之れ有らざるなり。」
-
呂氏春秋・壹行⑤孔子卜して、賁を得たり。孔子曰く、「吉ならず。」子貢曰く、「夫れ賁も亦た好し。何ぞ吉ならずと謂うや。」孔子曰く、「夫れ白ければ而ち白く、黑ければ而ち黑し。夫れ賁又何ぞ好からん。」故に賢者の物を惡む所は、處無きよりも惡むは無し。
-
『列子』説符篇列子射を學び、中つ。關尹子に請う。尹子曰く、子は子の中つる所以の者を知るか、と。對えて曰く、知らざるなり、と。關尹子曰く、未だ可ならず、と。退きて之を習う。三年、又た以て關尹子に報ず。尹子曰く、子は子の中つる所以を知るか、と。列子曰く、之を知れり、と。關尹子曰く、可なり。守りて失う勿かれ。獨り射のみに非ず。國を爲め身を爲むるも亦た皆な之くの如し。故に聖人は存亡を察せずして其の然る所以を察す、と。
-
『列子』周穆王篇秦人逢氏に子有り。少くして惠く、壯に及びて迷罔の疾有り。歌を聞きて以て哭と爲し、白を視て以て黑と爲し、香を饗して以て朽と爲し、甘を嘗めて以て苦と爲し、非を行いて以て是と爲す。意の之く所、天地・四方・水火・寒暑、倒錯せざる者無し。楊氏其の父に告げて曰く、魯の君子は術藝多し。將に能く已やさんか。汝奚ぞ焉に訪わざる、と。其の父魯に之き、陳を過ぎ、老聃に遇う。因りて其の子の證を告ぐ。