列子 / 説符篇
嚴恢曰:「所爲問道者爲富。今得珠亦富矣、安用道?」子列子曰:「桀紂唯重利而輕道、是以亡。幸哉余未汝語也。人而無義、唯食而已、是雞狗也。彊食靡角、勝者爲制、是禽獸也。爲雞狗禽獸矣、而欲人之尊己、不可得也。人不尊己、則危辱及之矣。」
新字:厳恢曰:「所為問道者為富。今得珠亦富矣、安用道?」子列子曰:「桀紂唯重利而軽道、是以亡。幸哉余未汝語也。人而無義、唯食而已、是雞狗也。彊食靡角、勝者為制、是禽獣也。為雞狗禽獣矣、而欲人之尊己、不可得也。人不尊己、則危辱及之矣。」
書き下し
嚴恢曰く、道を問うと爲す所以は富の爲なり。今珠を得れば亦た富めり。安んぞ道を用いん、と。子列子曰く、桀紂は唯だ利を重んじて道を輕んず。是を以て亡ぶ。幸いなるかな、余未だ汝に語らざりしは。人にして義無くんば、唯だ食らうのみ。是れ雞狗なり。彊いて食らい角を靡し、勝つ者制を爲す。是れ禽獸なり。雞狗禽獸と爲りて、人の己を尊ばんことを欲するは、得べからざるなり。人己を尊ばずんば、則ち危辱之に及ばん、と。
現代語訳
厳恢が言った。「道を問うのは、富むためだ。いま珠を手に入れれば、それでも富める。どうして道など要るのか」。列子は言った。「桀と紂は、ただ利を重んじて道を軽んじた。だから滅んだ。幸いなことに、私はまだお前に何も語っていなかった。人でありながら義がなければ、ただ食うだけである。それは鶏や犬だ。力ずくで食い、角を突き合わせ、勝った者が支配する。それは禽獣だ。鶏や犬や禽獣でありながら、人が自分を尊敬してくれることを望むのは、望んでも得られない。人が自分を尊敬しなければ、危険と屈辱がその身に及ぶ」。
解説
道を学ぶのは富むためだ、珠が手に入るならそれでよい。この問いに、列子は道徳では答えません。答えは効用の話です。義がなければ鶏や犬と同じであり、力ずくで奪い合えば禽獣である。そして禽獣でありながら人に尊敬されようとしても得られず、尊敬されなければ危険と屈辱が及ぶ。つまり、義がないと最終的に損をする、という筋で答えている。相手が利で来ているから、利で答えたのです。「幸いなるかな、余未だ汝に語らざりしは」――まだ何も教えていなくてよかった、という一言も効いています。教える相手を選ぶという判断です。
この章句が説くこと
道を問う所以は富の為なり人にして義無くんば唯だ食らうのみ是れ雞狗なり人己を尊ばずんば危辱之に及ばん誠実さ
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