列子 / 楊朱篇
楊朱曰:「豐屋、美服、厚味、姣色、有此四者、何求於外?有此而求外者、無厭之性。無厭之性、陰陽之蠹也。忠不足以安君、適足以危身、義不足以利物、適足以害生。安上不由於忠、而忠名滅焉、利物不由於義、而義名絕焉。君臣皆安、物我兼利、古之道也。
新字:楊朱曰:「豊屋、美服、厚味、姣色、有此四者、何求於外?有此而求外者、無厭之性。無厭之性、陰陽之蠹也。忠不足以安君、適足以危身、義不足以利物、適足以害生。安上不由於忠、而忠名滅焉、利物不由於義、而義名絶焉。君臣皆安、物我兼利、古之道也。
書き下し
楊朱曰く、豐屋・美服・厚味・姣色、此の四つの者有らば、何ぞ外に求めん。此れ有りて外に求むる者は、厭く無きの性なり。厭く無きの性は、陰陽の蠹なり。忠は以て君を安んずるに足らず、適だ以て身を危うくするに足る。義は以て物を利するに足らず、適だ以て生を害するに足る。上を安んずるは忠に由らず、而して忠の名滅す。物を利するは義に由らず、而して義の名絕ゆ。君臣皆な安く、物我兼ねて利するは、古の道なり。
現代語訳
楊朱は言った。「立派な家、美しい衣服、豊かな食事、美しい姿。この四つがあれば、何を外に求めることがあろう。これがありながら外に求める者は、飽くことを知らない性である。飽くことを知らない性は、陰陽を食い荒らす虫である。忠は君主を安んずるには足りず、かえって身を危うくするだけである。義は物を利するには足りず、かえって生を害するだけである。上を安んずるのは忠によるのではない。だから忠という名は消える。物を利するのは義によるのではない。だから義という名は絶える。君も臣もともに安らかであり、物も自分も両方が利する。これが古の道である」。
解説
忠が君主を安んじず、義が物を利さない。名分だけが立って実が伴っていない、という指摘です。ここで見落とせないのは、楊朱が君臣ともに安らかであることを否定していないことです。否定しているのは、忠という名を通してそこへ至る道筋のほうです。「上を安んずるは忠に由らず」――結果としてうまくいくことと、それが忠によって達成されることは別だ、と。組織で理念や価値観を掲げるとき、同じ問いが立ちます。掲げているものが実際に結果を生んでいるのか、結果は別の理由で出ていて、名前だけが乗っているのか。
この章句が説くこと
厭く無きの性は陰陽の蠹なり忠は以て君を安んずるに足らず適だ以て身を危うくす君臣皆な安く物我兼ねて利す誠実さ
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