列子 / 力命篇
墨杘、單至、嘽咺、憋懯四人相與游於世、胥如志也。窮年不相知情、自以智之深也。巧佞、愚直、婩斫、便辟四人相與游於世、胥如志也。窮年而不相語術、自以巧之微也。㺒㤉、情露、𧮈極、凌誶四人相與游於世、胥如志也。窮年不相曉悟、自以爲才之得也。眠娗、諈諉、勇敢、怯疑四人相與游於世、胥如志也。窮年不相讁發、自以行無戾也。多偶、自專、乘權、隻立四人相與游於世、胥如志也。窮年不相顧眄、自以時之適也。此衆態也、其貌不一、而咸之於道、命所歸也。
新字:墨杘、単至、嘽咺、憋懯四人相与游於世、胥如志也。窮年不相知情、自以智之深也。巧佞、愚直、婩斫、便辟四人相与游於世、胥如志也。窮年而不相語術、自以巧之微也。㺒㤉、情露、𧮈極、凌誶四人相与游於世、胥如志也。窮年不相暁悟、自以為才之得也。眠娗、諈諉、勇敢、怯疑四人相与游於世、胥如志也。窮年不相讁発、自以行無戻也。多偶、自専、乗権、隻立四人相与游於世、胥如志也。窮年不相顧眄、自以時之適也。此衆態也、其貌不一、而咸之於道、命所帰也。
書き下し
墨杘・單至・嘽咺・憋懯の四人相い與に世に游び、胥な志の如くす。年を窮むるも相い情を知らず。自ら以て智の深きと爲すなり。巧佞・愚直・婩斫・便辟の四人相い與に世に游び、胥な志の如くす。年を窮むるも相い術を語らず。自ら以て巧みの微なると爲すなり。㺒㤉・情露・𧮈極・凌誶の四人相い與に世に游び、胥な志の如くす。年を窮むるも相い曉悟せず。自ら以て才の得たりと爲すなり。眠娗・諈諉・勇敢・怯疑の四人相い與に世に游び、胥な志の如くす。年を窮むるも相い讁發せず。自ら以て行いに戾る無しと爲すなり。多偶・自專・乘權・隻立の四人相い與に世に游び、胥な志の如くす。年を窮むるも相い顧眄せず。自ら以て時の適えりと爲すなり。此れ衆態なり。其の貌は一ならず。而も咸な之を道に之かしむ。命の歸する所なり。
現代語訳
腹黒い者、せっかちな者、のろい者、気短な者、この四人がともに世を渡り、それぞれ思いどおりにやっている。一生かかっても互いの内心を知らない。自分の知恵が深いからだと思っている。口先の巧い者、馬鹿正直な者、無骨な者、こびへつらう者、この四人がともに世を渡り、それぞれ思いどおりにやっている。一生かかっても互いに手の内を語らない。自分の技が精妙だからだと思っている。狡猾な者、感情がむき出しの者、強情な者、人を責める者、この四人がともに世を渡り、それぞれ思いどおりにやっている。一生かかっても互いに悟り合わない。自分の才が働いているからだと思っている。とぼける者、人に押しつける者、勇敢な者、臆病で疑い深い者、この四人がともに世を渡り、それぞれ思いどおりにやっている。一生かかっても互いをとがめない。自分の行いに落ち度がないからだと思っている。人と交わる者、独断する者、権勢に乗る者、独りで立つ者、この四人がともに世を渡り、それぞれ思いどおりにやっている。一生かかっても互いを顧みない。時機が合っているからだと思っている。これらはさまざまなありようである。その姿は一つではない。それでもみな道に至る。命の帰するところである。
解説
この章句が説くこと
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『列子』力命篇命を信ずる者は、壽夭亡し。理を信ずる者は、是非亡し。心を信ずる者は、逆順亡し。性を信ずる者は、安危亡し。則ち之を都て信ずる所亡く、都て信ぜざる所亡しと謂う。真なり慤なり。奚をか去り奚をか就かん。奚をか哀しみ奚をか樂しまん。奚をか爲し奚をか爲さざらん。黄帝の書に云う、至人は居ること死せるが若く、動くこと械の若し、と。亦た居る所以を知らず、亦た居らざる所以を知らず、亦た動く所以を知らず、亦た動かざる所以を知らず。亦た衆人の觀るを以て其の情貌を易えず、亦た衆人の觀ざるを謂いて其の情貌を易えずんばあらず。獨り往き獨り來たり、獨り出で獨り入る。孰か能く之を礙げんや、と。
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『列子』力命篇力命に謂いて曰く、若の功は奚ぞ我の若くならんや、と。命曰く、汝物に奚の功ありてか朕に比せんと欲する、と。力曰く、壽夭・窮達・貴賤・貧富は、我が力の能くする所なり、と。命曰く、彭祖の智は堯舜の上に出でず、而も壽八百なり。顏淵の才は衆人の下に出でず、而も壽十八なり。仲尼の德は諸侯の下に出でず、而も陳蔡に困しむ。殷紂の行いは三仁の上に出でず、而も君位に居る。季札は吳に爵無く、田恆は齊國を專有す。夷齊は首陽に餓え、季氏は展禽より富む。若し是れ汝の力の能くする所ならば、柰何ぞ彼を壽くして此を夭くし、聖を窮せしめて逆を達せしめ、賢を賤しくして愚を貴くし、善を貧しくして惡を富ましむるか、と。
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『列子』力命篇佹佹として成る者は、成るに俏たり。初めより成るに非ざるなり。佹佹として敗るる者は、敗るるに俏たる者なり。初めより敗るるに非ざるなり。故に迷いは俏に生ず。俏の際は昧然たり。俏に於いて昧然たらざれば、則ち外禍に駭かず、内福に喜ばず、時に隨いて動き、時に隨いて止まる。智の知る能わざるなり。命を信ずる者は彼我に於いて二心無し。彼我に於いて二心有る者は、目を揜い耳を塞ぎ、坂を背にし隍に面するも亦た墜仆せざるに若かず。故に曰く、死生は自ずから命なり、貧窮は自ずから時なり、と。夭折を怨む者は、命を知らざる者なり。貧窮を怨む者は、時を知らざる者なり。死に當たりて懼れず、窮に在りて戚まざるは、命を知り時に安んずればなり。
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『列子』天瑞篇故に生ずる者有り、生を生ずる者有り。形ある者有り、形を形づくる者有り。聲ある者有り、聲を聲たらしむる者有り。色ある者有り、色を色たらしむる者有り。味ある者有り、味を味たらしむる者有り。生の生ずる所の者は死す、而れども生を生ずる者は未だ嘗て終わらず。形の形づくる所の者は實つ、而れども形を形づくる者は未だ嘗て有らず。聲の聲たる所の者は聞こゆ、而れども聲を聲たらしむる者は未だ嘗て發せず。色の色たる所の者は彰わる、而れども色を色たらしむる者は未だ嘗て顯れず。味の味たる所の者は嘗めらる、而れども味を味たらしむる者は未だ嘗て呈れず。皆な無爲の職なり。能く陰たり能く陽たり、能く柔たり能く剛たり、能く短かり能く長し、能く員かに能く方に、能く生き能く死し、能く暑く能く涼しく、能く浮き能く沈み、能く宮たり能く商たり、能く出で能く沒し、能く玄く能く黄に、能く甘く能く苦く、能く羶く能く香し。知無きなり、能無きなり、而も知らざる無きなり、而も能わざる無きなり。
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『列子』力命篇力曰く、若し若の言の如くんば、我固より物に功無くして、物此くの若きか。此れ則ち若の制する所か、と。命曰く、既に之を命と謂う。柰何ぞ之を制する者有らんや。朕は直きて之を推し、曲がりて之に任す。自ら壽く自ら夭く、自ら窮し自ら達し、自ら貴く自ら賤しく、自ら富み自ら貧し。朕豈に能く之を識らんや。朕豈に能く之を識らんや、と。