列子 / 力命篇
北宮子謂西門子曰:「朕與子並世也、而人子達、並族也、而人子敬、並貌也、而人子愛、並言也、而人子庸、並行也、而人子誠、並仕也、而人子貴、並農也、而人子富、並商也、而人子利。朕衣則裋褐、食則粢糲、居則蓬室、出則徒行。子衣則文錦、食則粱肉、居則連欐、出則結駟。在家熙然有棄朕之心、在朝諤然有敖朕之色。請謁不相及、遨遊不同行、固有年矣。子自以德過朕邪?」西門子曰:「予無以知其實。汝造事而窮、予造事而達、此厚薄之驗歟?而皆謂與予並、汝之顏厚矣。」
新字:北宮子謂西門子曰:「朕与子並世也、而人子達、並族也、而人子敬、並貌也、而人子愛、並言也、而人子庸、並行也、而人子誠、並仕也、而人子貴、並農也、而人子富、並商也、而人子利。朕衣則裋褐、食則粢糲、居則蓬室、出則徒行。子衣則文錦、食則粱肉、居則連欐、出則結駟。在家熙然有棄朕之心、在朝諤然有敖朕之色。請謁不相及、遨遊不同行、固有年矣。子自以徳過朕邪?」西門子曰:「予無以知其実。汝造事而窮、予造事而達、此厚薄之験歟?而皆謂与予並、汝之顏厚矣。」
書き下し
北宮子西門子に謂いて曰く、朕と子とは世を並ぶるなり。而るに人は子を達とす。族を並ぶるなり。而るに人は子を敬う。貌を並ぶるなり。而るに人は子を愛す。言を並ぶるなり。而るに人は子を庸う。行いを並ぶるなり。而るに人は子を誠とす。仕うるを並ぶるなり。而るに人は子を貴ぶ。農するを並ぶるなり。而るに人は子を富ましむ。商するを並ぶるなり。而るに人は子を利す。朕は衣は則ち裋褐、食は則ち粢糲、居は則ち蓬室、出づれば則ち徒行す。子は衣は則ち文錦、食は則ち粱肉、居は則ち連欐、出づれば則ち結駟す。家に在りては熙然として朕を棄つるの心有り、朝に在りては諤然として朕を敖るの色有り。請謁相い及ばず、遨遊行を同じくせざること、固より年有り。子自ら德の朕に過ぐと以えるか、と。西門子曰く、予は以て其の實を知る無し。汝は事を造して窮し、予は事を造して達す。此れ厚薄の驗か。而るに皆な予と並ぶと謂う。汝の顏厚し、と。
現代語訳
北宮子が西門子に言った。「私とあなたは同じ世に生きている。それなのに人はあなたを立派だとする。同じ家柄だ。それなのに人はあなたを敬う。同じ顔立ちだ。それなのに人はあなたを好む。同じことを言う。それなのに人はあなたを用いる。同じことをする。それなのに人はあなたを誠実だとする。同じように仕える。それなのに人はあなたを貴ぶ。同じように農をする。それなのにあなたは富む。同じように商いをする。それなのにあなたは儲かる。私は粗末な短い衣を着て、雑穀の飯を食い、あばら家に住み、出かけるときは歩く。あなたは錦を着て、上等の飯と肉を食い、棟の連なる家に住み、四頭立ての車で出かける。家にいるときはにこやかに私を捨て置く心があり、朝廷ではきっぱりと私を見下す色がある。訪ね合うこともなく、連れ立って遊ぶこともないまま、もう何年にもなる。あなたは自分の徳が私にまさっていると思っているのか」。西門子は言った。「私にはその実際のところは分からない。あなたは事を起こして行き詰まり、私は事を起こして栄えた。これが厚い薄いの証拠だろう。それなのに何もかも私と同じだと言う。あなたは面の皮が厚い」。
解説
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『列子』力命篇北宮子以て應うる無く、自失して歸る。中塗に東郭先生に遇う。先生曰く、汝奚くにか往きて反り、偊偊として步み、深く愧ずるの色有るか、と。北宮子其の狀を言う。東郭先生曰く、吾將に汝の愧を舍てしめん。汝と更めて西門氏に之きて之を問わん、と。曰く、汝奚ぞ北宮子を辱むること之れ深きか。固く且つ之を言え、と。西門子曰く、北宮子言えらく、世族・年貌・言行は予と並ぶ。而るに賤貴・貧富は予と異なる、と。予之に語げて曰く、予は以て其の實を知る無し。汝は事を造して窮し、予は事を造して達す。此れ將に厚薄の驗ならんか。而るに皆な予と並ぶと謂う。汝の顏厚し、と。
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『列子』力命篇東郭先生曰く、汝の言う厚薄は才德の差を言うに過ぎず。吾の言う厚薄は是に異なるなり。夫れ北宮子は德に厚くして、命に薄し。汝は命に厚くして、德に薄し。汝の達するは、智もて得たるに非ざるなり。北宮子の窮するは、愚もて失えるに非ざるなり。皆な天なり、人に非ざるなり。而るに汝は命の厚きを以て自ら矜り、北宮子は德の厚きを以て自ら愧ず。皆な夫の固然の理を識らざるなり、と。西門子曰く、先生止めよ。予敢えて復た言わず、と。
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『列子』力命篇北宮子既に歸り、其の裋褐を衣るに、狐貉の溫かき有り。其の茙菽を進むるに、稻粱の味有り。其の蓬室に庇るに、廣廈の蔭の若し。其の篳輅に乘るに、文軒の飾りの若し。終身逌然として、榮辱の彼に在るか、我に在るかを知らず。東郭先生之を聞きて曰く、北宮子の寐ぬること久し。一言にして能く寤む。悟り易きかな、と。
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『列子』力命篇力命に謂いて曰く、若の功は奚ぞ我の若くならんや、と。命曰く、汝物に奚の功ありてか朕に比せんと欲する、と。力曰く、壽夭・窮達・貴賤・貧富は、我が力の能くする所なり、と。命曰く、彭祖の智は堯舜の上に出でず、而も壽八百なり。顏淵の才は衆人の下に出でず、而も壽十八なり。仲尼の德は諸侯の下に出でず、而も陳蔡に困しむ。殷紂の行いは三仁の上に出でず、而も君位に居る。季札は吳に爵無く、田恆は齊國を專有す。夷齊は首陽に餓え、季氏は展禽より富む。若し是れ汝の力の能くする所ならば、柰何ぞ彼を壽くして此を夭くし、聖を窮せしめて逆を達せしめ、賢を賤しくして愚を貴くし、善を貧しくして惡を富ましむるか、と。
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『列子』説符篇魯の施氏に二子有り。其の一は學を好み、其の一は兵を好む。學を好む者は術を以て齊侯に干む。齊侯之を納れ、以て諸公子の傅と爲す。兵を好む者は楚に之き、法を以て楚王に干む。王之を悅び、以て軍正と爲す。祿は其の家を富ませ、爵は其の親を榮えしむ。施氏の鄰人孟氏も同じく二子有り。業とする所も亦た同じ。而るに貧に窘む。施氏の有るを羨み、因りて從いて進趨の方を請う。二子實を以て孟氏に告ぐ。
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『列子』力命篇墨杘・單至・嘽咺・憋懯の四人相い與に世に游び、胥な志の如くす。年を窮むるも相い情を知らず。自ら以て智の深きと爲すなり。巧佞・愚直・婩斫・便辟の四人相い與に世に游び、胥な志の如くす。年を窮むるも相い術を語らず。自ら以て巧みの微なると爲すなり。㺒㤉・情露・𧮈極・凌誶の四人相い與に世に游び、胥な志の如くす。年を窮むるも相い曉悟せず。自ら以て才の得たりと爲すなり。眠娗・諈諉・勇敢・怯疑の四人相い與に世に游び、胥な志の如くす。年を窮むるも相い讁發せず。自ら以て行いに戾る無しと爲すなり。多偶・自專・乘權・隻立の四人相い與に世に游び、胥な志の如くす。年を窮むるも相い顧眄せず。自ら以て時の適えりと爲すなり。此れ衆態なり。其の貌は一ならず。而も咸な之を道に之かしむ。命の歸する所なり。