列子 / 湯問篇
來丹曰:「雖然、吾必請其下者。」孔周乃歸其妻子、與齋七日。晏陰之間、跪而授其下劍、來丹再拜受之以歸。來丹遂執劍從黑卵。時黑卵之醉偃於牖下、自頸至腰三斬之、黑卵不覺。來丹以黑卵之死、趣而退。遇黑卵之子於門、擊之三下、如投虛。黑卵之子方笑曰:「汝何蚩而三招予?」來丹知劍之不能殺人也、歎而歸。黑卵既醒、怒其妻曰:「醉而露我、使我嗌疾而腰急。」其子曰:「疇昔來丹之來、遇我於門、三招我、亦使我體疾而支彊。彼其厭我哉!」
新字:来丹曰:「雖然、吾必請其下者。」孔周乃帰其妻子、与斎七日。晏陰之間、跪而授其下剣、来丹再拝受之以帰。来丹遂執剣従黒卵。時黒卵之酔偃於牖下、自頸至腰三斬之、黒卵不覚。来丹以黒卵之死、趣而退。遇黒卵之子於門、擊之三下、如投虚。黒卵之子方笑曰:「汝何蚩而三招予?」来丹知剣之不能殺人也、嘆而帰。黒卵既醒、怒其妻曰:「酔而露我、使我嗌疾而腰急。」其子曰:「疇昔来丹之来、遇我於門、三招我、亦使我体疾而支彊。彼其厭我哉!」
書き下し
來丹曰く、然りと雖も、吾は必ず其の下なる者を請わん、と。孔周乃ち其の妻子を歸し、與に齋すること七日。晏陰の間、跪きて其の下劍を授く。來丹再拜して之を受けて以て歸る。來丹遂に劍を執りて黑卵に從う。時に黑卵の醉いて牖下に偃す。頸より腰に至るまで三たび之を斬るも、黑卵覺えず。來丹黑卵の死せるを以て、趣りて退く。黑卵の子に門に遇い、之を擊つこと三下、虛に投ずるが如し。黑卵の子方に笑いて曰く、汝何ぞ蚩かにして三たび予を招くか、と。來丹劍の人を殺す能わざるを知り、歎じて歸る。黑卵既に醒め、其の妻を怒りて曰く、醉いて我を露わにし、我をして嗌疾ましめ腰急ならしむ、と。其の子曰く、疇昔來丹の來たるや、我に門に遇い、三たび我を招く。亦た我をして體疾ましめ支彊ならしむ。彼其れ我を厭うか、と。
現代語訳
来丹は言った。「そうであっても、私はぜひ一番下のものをお借りしたい」。孔周はそこで彼の妻子を返し、ともに七日間身を清めた。曇り空のころ、ひざまずいて一番下の剣を授けた。来丹は二度拝んでそれを受け取り、帰った。来丹はその剣を持って黒卵をつけ狙った。ちょうど黒卵が酔って窓の下に寝ていた。首から腰まで三度斬りつけたが、黒卵は気づかない。来丹は黒卵が死んだと思って、走って引き上げた。門のところで黒卵の子に出会い、三度打ちつけたが、空を打つようであった。黒卵の子は笑って言った。「お前はなんと間の抜けたことに、三度も私を手招きするのか」。来丹は剣が人を殺せないと知り、ため息をついて帰った。黒卵は目が覚めると、妻を叱って言った。「酔った私を外気にさらしたから、喉が痛み腰が張っている」。その子は言った。「昨日、来丹が来て、門で私に会い、三度手招きしました。私も体が痛み手足がこわばりました。あの男は私を呪っているのでしょうか」。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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『列子』湯問篇魏の黑卵暱嫌を以て丘邴章を殺す。丘邴章の子來丹、父の讐に報いんことを謀る。丹は氣甚だ猛なるも、形は甚だ露わなり。粒を計りて食らい、風に順いて趨る。怒ると雖も、兵を稱げて以て之に報ゆる能わず。力を人に假るを恥じ、手ずから劍して以て黑卵を屠らんことを誓う。黑卵は悍志衆に絕え、力は百夫に抗す。節骨皮肉は、人類に非ざるなり。頸を延べて刀を承け、胸を披きて矢を受くるも、鋩鍔摧け屈して、體に痕撻無し。其の材力を負み、來丹を視ること猶お雛鷇のごときなり。
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『列子』湯問篇來丹の友申他曰く、子の黑卵を怨むこと至れり。黑卵の子を易んずること過ぎたり。將た奚をか謀らんや、と。來丹涕を垂れて曰く、願わくは子我が爲に謀れ、と。申他曰く、吾聞く、衛の孔周は其の祖殷帝の寶劍を得たり、一童子之を服せば、三軍の衆を卻く、と。奚ぞ焉に請わざる、と。來丹遂に衛に適き、孔周に見え、僕御の禮を執り、先ず妻子を納れ、後に欲する所を言わんことを請う。
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『列子』湯問篇孔周曰く、吾に三劍有り。唯だ子の擇ぶ所なり。皆な人を殺す能わず。且く先ず其の狀を言わん。一に含光と曰う。之を視るも見るべからず、之を運らすも有るを知らず。其の觸るる所や、泯然として際無く、物を經るも物覺えず。二に承影と曰う。將に旦ならんとする昧爽の交、日夕昏明の際、北面して之を察すれば、淡淡焉として物の存する有るが若く、其の狀を識る莫し。其の觸るる所や、竊竊然として聲有り、物を經るも物疾まざるなり。三に宵練と曰う。方に晝なれば則ち影を見て光を見ず、方に夜なれば光を見て形を見ず。其の物に觸るるや、騞然として過ぎ、過ぐるに隨いて隨いて合し、疾みを覺ゆるも刃に血あらず。此の三寶なる者は、之を傳うること十三世なり。而して事に施す無し。匣にして之を藏し、未だ嘗て封を啓かず、と。
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荘子・説剣荘子殿門に入りて趨(はし)らず、王に見えて拝せず。王曰く、「子は何を以て寡人に教えんと欲して、太子をして先んぜしむるか」と。曰く、「臣は大王の剣を喜むを聞く。故に剣を以て王に見ゆ」と。王曰く、「子の剣は何をか能く禁制する」と。曰く、「臣の剣は、十歩に一人、千里に行を留めず」と。王大いに之を悦びて曰く、「天下に敵無きなり」と。荘子曰く、「夫れ剣を為す者は、之に示すに虚を以てし、之を開くに利を以てし、之に後(おく)れて発し、之に先んじて至る。願わくは之を試むるを得ん」と。王曰く、「夫子休して舎に就け。命令を待ちて戯(ぎ)を設け、夫子を請わん」と。王乃ち剣士を校(くら)ぶること七日、死傷する者六十余人。五六人を得て、剣を殿下に奉ぜしめ、乃ち荘子を召す。王曰く、「今日、試みに士をして剣を敦(きそ)わしめん」と。荘子曰く、「之を望むこと久し」と。王曰く、「夫子の御する所の杖、長短は何如」と。曰く、「臣の奉ずる所は皆な可なり。然れども臣に三剣有り。唯だ王の用うる所なり。請う、先ず言いて後に試みん」と。
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『列子』黄帝篇伯昏瞀人曰く、善いかな觀るや。汝己に處らば、人將に汝を保らんとす、と。幾何も無くして往けば、則ち戶外の屨滿てり。伯昏瞀人北面して立ち、杖を敦てて之を頤に蹙む。立つこと閒有りて、言わずして出づ。賓者以て列子に告ぐ。列子履を提げ徒跣にして走り、門に暨びて問いて曰く、先生既に來たり、曾て藥を廢てざるか、と。曰く、已めよ。吾固より汝に告げて曰えり、人將に汝を保らんとす、と。果たして汝を保れり。汝の能く人をして汝を保らしむるに非ずして、汝の能く人をして汝を保ること無からしめざるなり。而ち焉んぞ之を感ずるを用いん。感ずれば豫め異を出だす。且つ必ず感ずること有らば、而の本身を搖るがす。又た謂う無きなり。汝と遊ぶ者は、汝に告ぐる莫し。彼の小言する所は、盡く人の毒なり。覺る莫く悟る莫し。何ぞ相い孰せんや、と。
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荘子・説剣王曰く、「庶人の剣は何如」と。曰く、「庶人の剣は、蓬頭・突鬢・垂冠、曼胡の纓、短後の衣、目を瞋(いか)らして語ること難く、前に相撃つ。上は頸領を斬り、下は肝肺を決す。此れ庶人の剣、闘鶏に異なる無し。一旦、命已に絶えん。国事に用うる所無し。今、大王は天子の位有り。而して庶人の剣を好む。臣は竊かに大王の為に之を薄しとす」と。