列子 / 湯問篇
王試廢其心、則口不能言、廢其肝、則目不能視、廢其腎、則足不能步。穆王始悅而歎曰:「人之巧乃可與造化者同功乎?」詔貳車載之以歸。夫班輸之雲梯、墨翟之飛鳶、自謂能之極也。弟子東門賈禽滑釐聞偃師之巧以告二子、二子終身不敢語藝、而時執規矩。
新字:王試廃其心、則口不能言、廃其肝、則目不能視、廃其腎、則足不能歩。穆王始悅而嘆曰:「人之巧乃可与造化者同功乎?」詔貳車載之以帰。夫班輸之雲梯、墨翟之飛鳶、自謂能之極也。弟子東門賈禽滑釐聞偃師之巧以告二子、二子終身不敢語芸、而時執規矩。
書き下し
王試みに其の心を廢すれば、則ち口言う能わず。其の肝を廢すれば、則ち目視る能わず。其の腎を廢すれば、則ち足步む能わず。穆王始めて悅びて歎じて曰く、人の巧みは乃ち造化者と功を同じくすべきか、と。詔して貳車に之を載せて以て歸らしむ。夫れ班輸の雲梯、墨翟の飛鳶は、自ら能の極みと謂えり。弟子の東門賈・禽滑釐、偃師の巧みを聞きて以て二子に告ぐ。二子終身敢えて藝を語らず、而して時に規矩を執る。
現代語訳
王がためしにその心臓を取り除くと、口がきけなくなった。肝臓を取り除くと、目が見えなくなった。腎臓を取り除くと、足が歩けなくなった。穆王ははじめて喜んで嘆じた。「人の技巧というのは、造化のはたらきと同じことをなしうるのか」。詔して副車にそれを載せて持ち帰らせた。そもそも公輸班の雲梯や、墨翟の飛ぶ鳶は、作った本人が技の極みだと思っていた。弟子の東門賈と禽滑釐が、偃師の巧みさを聞いて二人に伝えた。二人は生涯あえて技術を語らなくなり、ときおり定規とコンパスを手に取るだけになった。
解説
臓器を一つ外すごとに、対応する機能が失われる。人形が生き物と同じ設計になっていることの証明です。王はここではじめて喜び、「人の技は造化と同じ働きをなしうるのか」と問いました。答えは書かれていません。そして結びが強烈です。当代最高の技術者だった公輸班と墨翟は、この話を弟子から聞いて、生涯技術を語らなくなった。上には上がいると知って、口を閉じ、定規とコンパスを手に取るだけになった。誇るのをやめて、基本の道具に戻った。上を知った人の身の処し方として、これ以上のものはあまりありません。
この章句が説くこと
其の心を廃すれば口言う能わず人の巧みは造化者と功を同じくすべきか二子終身敢えて芸を語らず
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