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列子 / 湯問篇

禹之治水土也、迷而失塗、謬之一國。濱北海之北、不知距齊州幾千萬里。其國名曰終北、不知際畔之所齊限、無風雨霜露、不生鳥獸、蟲魚、草木之類。四方悉平、周以喬陟。當國之中有山、山名壺領、狀若甔甀。頂有口、狀若員環、名曰滋穴。有水湧出、名曰神瀵、臭過蘭椒、味過醪醴。一源分爲四埒、注於山下。經營一國、亡不悉徧。

新字:禹之治水土也、迷而失塗、謬之一国。浜北海之北、不知距斉州幾千万里。其国名曰終北、不知際畔之所斉限、無風雨霜露、不生鳥獣、虫魚、草木之類。四方悉平、周以喬陟。当国之中有山、山名壺領、状若甔甀。頂有口、状若員環、名曰滋穴。有水湧出、名曰神瀵、臭過蘭椒、味過醪醴。一源分為四埒、注於山下。経営一国、亡不悉遍。

書き下し

禹の水土を治むるや、迷いて塗を失い、一國に謬る。北海の北に濱し、齊州を距ること幾千萬里なるかを知らず。其の國を名づけて終北と曰う。際畔の齊限する所を知らず。風雨霜露無く、鳥獸・蟲魚・草木の類を生ぜず。四方悉く平らかにして、周るに喬陟を以てす。國の中に當たりて山有り。山を壺領と名づく。狀は甔甀の若し。頂に口有り、狀は員環の若し。名づけて滋穴と曰う。水有りて湧き出づ。名づけて神瀵と曰う。臭いは蘭椒に過ぎ、味は醪醴に過ぐ。一源分かれて四埒と爲り、山下に注ぐ。一國を經營して、悉く徧からざる亡し。

現代語訳

禹が水土を治めていたとき、道に迷って進路を失い、ある国に迷い込んだ。北海の北に面していて、中原から何千万里離れているのか分からない。その国を終北という。境界がどこまでなのか分からない。風も雨も霜も露もなく、鳥獣も虫魚も草木も生えない。四方はことごとく平らで、周囲を高い坂が取り巻いている。国の中央に山があり、山を壺領という。形は口のすぼまった甕のようだ。頂に口があり、形は丸い環のようで、滋穴という。そこから水が湧き出ていて、神瀵という。香りは蘭や山椒より強く、味は濁り酒や甘酒よりまさる。一つの源が四筋に分かれ、山の下へ注ぐ。国じゅうを巡って、行きわたらないところがない。

解説

風雨も霜露もなく、鳥獣草木も生えない。ふつうなら不毛の地の描写です。ところが中央の山から湧く泉が、国じゅうに行きわたっている。外から入るものが何もなく、内側の一つの源だけで成り立っている国です。閉じた系として完璧に設計されている。組織にたとえるなら、外部からの刺激も競争もなく、内側の一つの原理だけで回っている状態です。これが理想郷として描かれるのか、それとも別の何かとして描かれるのかは、次の段の住民の姿を見ないと分かりません。列子はこの国を、周穆王と斉の桓公という二人の君主の反応を通して評価します。

この章句が説くこと

終北の国風雨霜露無し壺領・滋穴・神瀵一源分かれて四埒と為る

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