列子 / 周穆王篇
居亡幾何、謁王同游。王執化人之袪、騰而上者、中天迺止。暨及化人之宮、化人之宮構以金銀、絡以珠玉、出雲雨之上、而不知下之據、望之若屯雲焉。耳目所觀聽、鼻口所納嘗、皆非人間之有。王實以爲清都、紫微、鈞天、廣樂、帝之所居。王俯而視之、其宮榭若累塊積蘇焉。王自以居數十年不思其國也。
新字:居亡幾何、謁王同游。王執化人之袪、騰而上者、中天迺止。暨及化人之宮、化人之宮構以金銀、絡以珠玉、出雲雨之上、而不知下之拠、望之若屯雲焉。耳目所観聴、鼻口所納嘗、皆非人間之有。王実以為清都、紫微、鈞天、広楽、帝之所居。王俯而視之、其宮榭若累塊積蘇焉。王自以居数十年不思其国也。
書き下し
居ること幾何も亡くして、王に謁して同に游ばんとす。王化人の袪を執り、騰りて上る者、中天にして迺ち止まる。化人の宮に暨び及ぶに、化人の宮は構うるに金銀を以てし、絡ぐに珠玉を以てす。雲雨の上に出でて、下の據る所を知らず。之を望むに屯雲の若し。耳目の觀聽する所、鼻口の納嘗する所、皆な人間の有に非ず。王實に以て清都・紫微・鈞天・廣樂、帝の居る所と爲す。王俯して之を視るに、其の宮榭は累塊積蘇の若し。王自ら以て居ること數十年、其の國を思わざるなり。
現代語訳
いくらもたたぬうちに、幻術使いは王に一緒に遊ばないかと申し出た。王が彼の袖をつかむと、二人は昇っていき、中天まで来て止まった。幻術使いの宮殿に着いてみると、その宮殿は金銀で組まれ、珠玉でつながれていた。雲や雨のはるか上に出ていて、何の上に立っているのか分からない。遠くから見れば群がる雲のようである。目に見え耳に聞こえるもの、鼻や口に入るものは、みな人間界にあるものではなかった。王はここを本当に、清都・紫微・鈞天・広楽といった天帝の住まいだと思った。王が下を見下ろすと、自分の宮殿や高殿は、土くれを積み枯れ草を重ねたようにしか見えなかった。王は自分が数十年ここに住んでいるように思い、自分の国のことを思い出さなかった。
解説
国庫を空にして建てた中天の台が、上から見れば土くれの山でした。この落差が周穆王篇の主題です。基準が一段上がると、それまで全財産を投じたものが取るに足らなく見える。しかも王は、数十年住んだような感覚を持ち、自分の国を思い出さなくなった。時間の感覚まで狂っています。より大きな世界を見せられた人が、自分の持ち場を軽んじるようになるのは、いまでも起きます。海外の巨大企業を見てきた経営者が、自社の努力を土くれのように語りはじめる。見えたこと自体は本物ですが、そこで国を忘れれば、戻る場所がなくなります。
この章句が説くこと
化人の宮は金銀を以て構う其の宮榭は累塊積蘇の若し其の国を思わざるなり
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