列子 / 黄帝篇
禽獸之智有自然與人童者、其齊欲攝生、亦不假智於人也。牝牡相偶、母子相親、避平依險、違寒就溫、居則有羣、行則有列、小者居內、壯者居外、飲則相攜、食則鳴羣。太古之時、則與人同處、與人並行。帝王之時、始驚駭散亂矣。逮於末世、隱伏逃竄、以避患害。
新字:禽獣之智有自然与人童者、其斉欲摂生、亦不仮智於人也。牝牡相偶、母子相親、避平依険、違寒就温、居則有羣、行則有列、小者居内、壮者居外、飲則相攜、食則鳴羣。太古之時、則与人同処、与人並行。帝王之時、始驚駭散乱矣。逮於末世、隠伏逃竄、以避患害。
書き下し
禽獸の智に自然と人と童しき者有り。其の齊しく生を攝せんと欲するは、亦た智を人に假らざるなり。牝牡相い偶し、母子相い親しみ、平を避けて險に依り、寒に違いて溫に就く。居れば則ち羣有り、行けば則ち列有り。小なる者は内に居り、壯なる者は外に居る。飲めば則ち相い攜え、食らえば則ち羣に鳴く。太古の時は、則ち人と處を同じくし、人と並び行けり。帝王の時、始めて驚駭散亂す。末世に逮びて、隱伏逃竄し、以て患害を避く。
現代語訳
禽獣の知恵には、生まれつき人と同じものがある。同じように命を保とうとする点では、人から知恵を借りているのではない。雌雄は連れ添い、母と子は親しみ、平地を避けて険しいところに拠り、寒さを避けて暖かいところへ移る。住むときは群れをなし、進むときは列をなす。小さいものは内側にいて、大きいものは外側にいる。水を飲むときは連れ立ち、食べるときは仲間に鳴いて知らせる。太古の時代には、獣は人と同じところに住み、人と並んで歩いていた。帝王の時代になって、はじめて驚き散り乱れた。末の世になると、隠れ潜み逃げ隠れして、害を避けるようになった。
解説
獣の暮らし方が細かく描写されます。連れ添い、親しみ、群れをなし、列をなし、小さいものを内側に置き、食べ物を仲間に知らせる。人の共同体とほとんど区別がつきません。そのうえで一行が置かれます。太古には人と並んで歩いていたが、帝王の時代に散り乱れ、末世には隠れるようになった。関係を壊したのは獣ではなく、統治する側だという指摘です。組織にも同じ経過があります。創業期には社長と現場が並んで歩いていた。制度が整うと距離ができ、成熟すると本音が隠れる。制度そのものが悪いのではなく、制度が生まれる過程で誰かが「使う側」になったことが効いています。
この章句が説くこと
太古の時は人と処を同じくす帝王の時始めて驚駭散乱す隠伏逃竄して患害を避く秩序
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