忍経 / 遜以自免
唐婁師德,深沉有度量,人有忤己,遜以自免,不見容色。嘗與李昭德偕行,師德素豐碩,不能劇步,昭德遲之,恚曰:「為田舍子所留。」師德笑曰:「吾不田舍,復在何人?」
新字:唐婁師徳,深沈有度量,人有忤己,遜以自免,不見容色。嘗与李昭徳偕行,師徳素豊碩,不能劇歩,昭徳遅之,恚曰:「為田舎子所留。」師徳笑曰:「吾不田舎,復在何人?」
書き下し
唐の婁師德は、深沈にして度量有り。人の己に忤ふ有れば、遜りて以て自ら免れ、容色に見さず。嘗て李昭德と偕に行く。師德素より豐碩にして、劇しく步むこと能はず。昭德之を遲しとし、恚りて曰く、「田舍子の爲に留めらる」と。師德笑ひて曰く、「吾田舍ならずんば、復た何人に在らん」と。
現代語訳
唐の婁師徳は、落ち着いて思慮深く、度量の大きな人でした。人に逆らわれても、へりくだって争いを避け、顔色に出しませんでした。あるとき李昭徳(唐の宰相)と一緒に歩いていました。師徳はもともと太っていて、速く歩けませんでした。昭徳は遅いのに腹を立てて「田舎者のせいで足止めを食う」と言いました。師徳は笑って「私が田舎者でなければ、ほかに誰が田舎者だというのですか」と言いました。
解説
唾面自乾の話でも出てきた唐の宰相婁師徳の、別の逸話です。一緒に歩いていた同僚の李昭徳に、足が遅いのを田舎者とののしられても、師徳は笑って、自分こそ田舎者だと受け流しました。反論も言い訳もせず、相手の言葉をそのまま引き受けて笑いに変えたのです。自分を低く置く言葉は、相手の攻撃から力を奪います。ちなみに李昭徳は強気な性格で知られ、のちに失脚しています。ささいな悪口に正面から言い返すと、話は大きくなるばかりです。自分への小さな揶揄を笑って引き受けられる余裕は、人間関係を軽くする力になります。

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本の中身を見るこの章句が説くこと
忍謙虚婁師徳揶揄処世
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