宋名臣言行録 / 前集巻六・韓億
范文正知開封獻百官圖指宰相差除不公隂薦公可用文正既貶仁宗以諭公公曰若仲淹舉臣以公則臣之拙直陛下所知舉臣以私則臣委質以来未嘗交託於人遂除參政
新字:范文正知開封献百官図指宰相差除不公陰薦公可用文正既貶仁宗以諭公公曰若仲淹舉臣以公則臣之拙直陛下所知舉臣以私則臣委質以来未嘗交託於人遂除参政
書き下し
范文正、開封を知る。百官圖を獻じ、宰相の差除の公ならざるを指す。隂かに公の用う可きを薦む。文正既に貶せらる。仁宗、以て公に諭す。公曰く、若し仲淹、臣を舉ぐるに公を以てせば、則ち臣の拙直は陛下の知る所なり。臣を舉ぐるに私を以てせば、則ち臣、質を委ねしより以来、未だ嘗て人に交託せずと。遂に參政に除す。
現代語訳
范仲淹が開封の長官であった。百官の図を献じて、宰相の人事が公正でないことを指摘した。ひそかに公が用いるに足ると推薦した。范仲淹はそれによって流された。仁宗はそれを公に告げた。公は言った。「もし范仲淹が臣を推薦したのが公のためであれば、臣の不器用な真っ直ぐさは陛下のご存じのところです。もし臣を推薦したのが私情であれば、臣は身を委ねて仕えて以来、一度も人と私的に結んだことがありません」。そこで参知政事に任じた。
解説
流された人から推薦されていた、という微妙な立場で答えた条です。二つに割って、どちらでも自分は困らない形にしています。**公のための推薦なら、私の不器用な真っ直ぐさは陛下がご存じのはず。私情での推薦なら、私は仕えて以来、一度も人と私的に結んだことがありません。**弁解ではなく、場合分けです。前者は帝の判断に、後者は自分の記録に委ねている。
この章句が説くこと
若し仲淹臣を舉ぐるに公を以てせば則ち臣の拙直は陛下の知る所なり臣を舉ぐるに私を以てせば則ち臣質を委ねしより以来未だ嘗て人に交託せず宰相の差除の公ならざるを指す嫌疑公私潔白
関連する章句
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『宋名臣言行録』前集巻七・范仲淹公、開封を知る。百官圖を為りて以て獻じて曰く、人に任ずるに各々其の才を以てすれば、百職修まる。堯舜の治も此くの如きに過ぎずと。因りて其の遷進の遲速・次序を指して曰く、此くの如くにして以て公と為す可く、以て私と為す可し。亦た察せざる可からずと。是に由りて吕丞相怒り、上前に交々論ずるに至る。公、對を求めて辨ず。語切なり。坐して職を落とされ饒州を知る。饒州に貶せられ、謝表に云う、此にして郡と為らば、優優たる布政の方を陳べん。必ずや朝に立たば、蹇蹇たる匪躬の節を増さんと。天下、公の至誠にして國を許し、始終渝らず、進退を以て其の守を易えざるを歎ず。
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『宋名臣言行録』前集巻七・范仲淹公、服中に宰相に書を上り、朝政の得失及び民間の利病を言う。凡そ萬餘言。王曽、見て之を偉とす。時に晏殊も亦た京師に在り。一人を薦めて館職と為す。曽、殊に謂いて曰く、公、范仲淹を知る。捨てて薦めずして斯の人を薦むるかと。已に公の為に置きて行わず。宜しく更に仲淹を薦むべしと。殊之に從う。遂に館職に除す。頃くして冬至、仗を立つ。禮官、議を定め、章獻に媚びんと欲す。天子、百官を帥いて夀を庭に獻ぜんことを請う。公奏して不可とす。殊大いに懼れ、公を召して之を責め怒り、以て狂と為す。公、色を正して抗言して曰く、仲淹、明公の誤知を受け、常に稱わずして知己の為に羞を為さんことを懼る。意わざりき、今日、更に正論を以て門下に罪を獲んとはと。殊慙じて以て應うる無し。
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『宋名臣言行録』後集巻一・韓琦公相位に在り、進め用うる所の人は惟だ公議の在る所を以てす。凡そ上前に薦引するも、未だ嘗て輒ち其の語を漏らさず。間ミ上に宣諭有るに因り、或いは同僚談說して、人始めて之を聞く。
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『宋名臣言行録』前集巻六・吕夷簡景祐中、公執政す。范文正、天章閣待制を以て開封府を知る。屢々公の短を攻む。坐して職を落とし饒州を知る。康定元年、舊職に復して永興軍を知る。㑹々公、大名より復た入りて相たり。仁宗に言いて曰く、仲淹は賢者なり。朝廷將に之を用いんとす。豈に但だ舊職を除する可けんやと。即ち龍圖閣直學士・陜西經略安撫副使に除す。上、公を以て長者と為す。天下も亦た公の舊惡を念わざるを以てす。文正、面のあたり謝して曰く、曏に公事を以て相公を忤犯す。意わざりき、相公乃ち爾く奬拔せんとはと。公曰く、夷簡、豈に敢えて舊事を以て念と為さんやと。
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『宋名臣言行録』前集巻五・王曽魏公言う、公、國に當たりて、門下、未だ嘗て一人を顯拔せず。希文、間に乘じて輙ち之を諷して曰く、士類を明揚するは宰相の任なり。公の盛徳、獨り此を少くのみと。公、徐ろに之に應じて曰く、司諌、思わざるか。恩、若し已に出づれば、怨、將に誰にか歸せんとすと。希文惘然として歎じて曰く、真の宰相なりと。
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『宋名臣言行録』後集巻十一・范純仁公相位に在りて、凡そ人材を薦引するに必ず天下の公議を以てす。薦むる所の士は未だ嘗て公より出づるを知らず。公も亦た未だ嘗て恩意を人に示さず。人或いは公に謂いて曰く、身宰相と爲る。豈に天下の士を牢籠して門下より出づるを知らしめざる可けんやと。公曰く、但だ願わくは朝廷の進用正人を失わざらんことを。何ぞ必ずしも我が門下より出づるを知らしむるを須いんやと。