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甲陽軍鑑 / 品第六

信をとらぬ人の云ふ樣もことはり也、八幡の社人、愛宕坊主などは天下一の武邊者に成べきかと神を信ずる者を誹ル雖然、金堀が金を堀りて已がにはせずして人にもたするもの也、左云ふ人も子など存命不定に病し、或は又主君の勘當を蒙り、何の道にも及難義一時は諸神諸佛に立願す、皆な是れ人間の迷なり、迷に便りて身をすくる、人をして不迷悉くさとりなば僧社人は餓死すべし、されはむかしより名を得たる人十は九人信心ならぬ人はなし、祈も天道いのらぬも天道、

新字:信をとらぬ人の云ふ様もことはり也、八幡の社人、愛宕坊主などは天下一の武辺者に成べきかと神を信ずる者を誹ル雖然、金堀が金を堀りて已がにはせずして人にもたするもの也、左云ふ人も子など存命不定に病し、或は又主君の勘当を蒙り、何の道にも及難義一時は諸神諸仏に立願す、皆な是れ人間の迷なり、迷に便りて身をすくる、人をして不迷悉くさとりなば僧社人は餓死すべし、されはむかしより名を得たる人十は九人信心ならぬ人はなし、祈も天道いのらぬも天道、

書き下し

信をとらぬ人の云ふ様もことはり也、八幡の社人、愛宕坊主などは天下一の武辺者に成べきかと神を信ずる者を誹ル雖然、金堀が金を堀りて已がにはせずして人にもたするもの也、左云ふ人も子など存命不定に病し、或は又主君の勘当を蒙り、何の道にも及難義一時は諸神諸仏に立願す、皆な是れ人間の迷なり、迷に便りて身をすくる、人をして不迷悉くさとりなば僧社人は餓死すべし、されはむかしより名を得たる人十は九人信心ならぬ人はなし、祈も天道いのらぬも天道、

現代語訳

信を取らない人の言う様ももっともである。八幡の社人や愛宕の坊主などは天下一の武辺者になるべきかと、神を信ずる者を誹る。しかしながら、金掘りが金を掘って自分の物にはせず人に持たせる物である。そう言う人も、子などの存命が不定に病んだり、あるいはまた主君の勘当を蒙り、何の道にも難儀に及ぶ一時は、諸神諸仏に立願する。皆なこれ人間の迷いである。迷いに便って身を助ける。人をして迷わせず、ことごとく悟らせたならば、僧や社人は餓死するはずだ。であれば、昔から名を得た人は、十のうち九人まで信心ならぬ人はいない。祈るも天道、祈らぬも天道。

解説

信心を笑う理屈も認めたうえで、その本人が難儀の時には願をかけると指摘する。宗教者は人の迷いで食べている、迷いがなくなれば餓死する、とまで言い切りながら、それでも名を成した者は十中九まで信心があると結ぶ。醒めた目と信心が同居している。醒めた目と信心が同居している。宗教者は人の迷いで食べているとまで言いながら、名を成した者は十中九まで信心があると結んでいる。

この章句が説くこと

信心迷い天道宗教人情矛盾

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