甲陽軍鑑 / 品第六
又世間にしづかに物を云ふ人は分別有り、早く物をいふ人は分別なしと云ふ、ひがごとなり、たとへば女人の分別のごとく僻事なるべし、物をは早くもいへ、遲くもいへ其人の行跡前後の首尾さだまり、締りたる手抦、或は言にも非のなきは分別者の頂上ならん、但又其上、君により能者埋れて賢言用にたゝぬ事もあり、
新字:又世間にしづかに物を云ふ人は分別有り、早く物をいふ人は分別なしと云ふ、ひがごとなり、たとへば女人の分別のごとく僻事なるべし、物をは早くもいへ、遅くもいへ其人の行跡前後の首尾さだまり、締りたる手抦、或は言にも非のなきは分別者の頂上ならん、但又其上、君により能者埋れて賢言用にたゝぬ事もあり、
書き下し
又世間にしづかに物を云ふ人は分別有り、早く物をいふ人は分別なしと云ふ、ひがごとなり、たとへば女人の分別のごとく僻事なるべし、物をは早くもいへ、遅くもいへ其人の行跡前後の首尾さだまり、締りたる手抦、或は言にも非のなきは分別者の頂上ならん、但又其上、君により能者埋れて賢言用にたゝぬ事もあり、
現代語訳
また世間では、静かに物を言う人は分別があり、早く物を言う人は分別がないと言う。僻事である。たとえば女人の分別のごとく、僻事であろう。物は早くも言え、遅くも言え。その人の行跡の前後の首尾が定まり、締まった手柄、あるいは言葉にも非のないのが、分別者の頂上であろう。ただし、またその上に、君によっては能ある者が埋もれて、賢い言葉が用に立たぬ事もある。
解説
喋り方で人を測る癖を、はっきり僻事と切り捨てている。見るべきは物言いの速さではなく、その人の行いの前後が揃っているか、言った事に非がないか。そのうえで、どれだけ賢くとも主君次第で埋もれるという但し書きを添える。見るべきは物言いの速さではなく、行いの前後が揃っているかどうかである。そのうえで、主君次第で埋もれるという但し書きが添えられる。
この章句が説くこと
分別物言い偏見言行主君埋没
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