甲陽軍鑑 / 品第四十七
下よりつもりの外、刀をくれべきと申には、小袖をくれ馬をとらすべき者と人々申には、代物を一貫ばかりとらせ、此人にはふるき物は下さるまじきと取さた候へば、其者には金子などを澤山にとらせたるこそ手の外の樣子にて、それが國持大將の作法なり、縱へば敵へ取かくるに城ノ介こそ是へいづると申所へは少も出ずして敵に骨をおらせ、又いづまじきと敵の思ふ所へは如何にもかるく出てこそ利はなる物なれ、まちかまへてるたる所へ出ては何として利がなるべきぞ、
新字:下よりつもりの外、刀をくれべきと申には、小袖をくれ馬をとらすべき者と人々申には、代物を一貫ばかりとらせ、此人にはふるき物は下さるまじきと取さた候へば、其者には金子などを沢山にとらせたるこそ手の外の様子にて、それが国持大将の作法なり、縦へば敵へ取かくるに城ノ介こそ是へいづると申所へは少も出ずして敵に骨をおらせ、又いづまじきと敵の思ふ所へは如何にもかるく出てこそ利はなる物なれ、まちかまへてるたる所へ出ては何として利がなるべきぞ、
書き下し
下よりつもりの外、刀をくれべきと申には、小袖をくれ馬をとらすべき者と人々申には、代物を一貫ばかりとらせ、此人にはふるき物は下さるまじきと取さた候へば、其者には金子などを沢山にとらせたるこそ手の外の様子にて、それが国持大将の作法なり、縦へば敵へ取かくるに城ノ介こそ是へいづると申所へは少も出ずして敵に骨をおらせ、又いづまじきと敵の思ふ所へは如何にもかるく出てこそ利はなる物なれ、まちかまへてるたる所へ出ては何として利がなるべきぞ、
現代語訳
下よりの積もりの外である。刀を与えるべきと申すには小袖を与え、馬を取らすべき者と人々が申すには代物を一貫ばかり取らせ、この人には古き物は下さるまじきと取り沙汰候えば、その者には金子などを沢山に取らせたるこそ手の外の様子にて、それが国持大将の作法である。たとえば、敵へ取りかくるに、城ノ介こそここへ出ずると申す所へは少しも出ずして敵に骨を折らせ、また出るまじきと敵の思う所へは、いかにも軽く出てこそ利はなる物なれ。待ち構えていたる所へ出ては、何として利がなるべきぞ。
解説
この章句が説くこと
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『甲陽軍鑑』品第四十三先如此外題をもつて書おかねば其様子聞へかね候間如件一信玄公於御陣手抦をなす者に褒美なさるゝその色々は一御證文上中下有一のし付の刀·脇指一鑓·長刀一のどわ一小袖一羽織一基石金一づきんまで、長持に一ッ持たせ給ふなり、功により又は時のしほにより是を下さるゝ事御使にて給はり、又は家老衆をもつて給り、或は二十人衆の頭·御中間頭衆をもつても給る、さて又御前へめしよせられ給るもあり其様子あり○信玄公軍法之事、
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『甲陽軍鑑』品第四十七惣別噐用だてをする者は無噐用の真只中、分別だてをする者は無分別の九ツ時分にて候ぞ、武士は手の外を仕り、下よりつもられぬが本の大将也と申されたるよし聞及て候、信長公あらぎなる大将のやうに申なし候へ共、右の段は聞事なることなり、
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『甲陽軍鑑』品第四十七其様なる侍がかならず利発だてをして、身に自慢の心有て口をきく者也、さやうの人が卅にあまり四十に及ぶ共終に手抦もなき者なり、縦ひよき事一度斗り有るとも仕よき事たるべし、其様成る者は能く人をだます故に、人毎の機にあふてほめらるゝ、其者をみしらずして恩をあたゆるは、国持大将のおはきなるけがなり、
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『甲陽軍鑑』品第四十七若しにぐる者などをば心の剛なるにもよらず、かけあしのはやき者次第に伐りとめんずるぞ、又大剛の兵と若侍としあふて、剛の者みぞや石につまづきてころび、纔かのせがれにきりころさるゝ事あるべし、それは時の仕合にて、けがのまけと云ふ物也、勝つも不慮の手抦なり、然れ共若者大剛の者と立ち向ふ意地をほめたり、ころしたるばかりに目を付けてほむるは、溝や石をほむる道理なり、
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『甲陽軍鑑』品第四十七諸人ほめたてば、ほむる者も奥深く人が存ずる者なり、子細は世間の人、我きらひの芸を上手にする者をば用ひず、我数寄の芸を上手にいたす者をおくゆかしく思ふに付、其人に向ひ挨拶も一入よき物にて有り、親兄弟の敵討たる者をほむるは、をのれも身にかゝりてよくうたんや、敵うちする者をそしる人は其身にかけて親兄弟の敵うつまじきといふ心ならん、
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『甲陽軍鑑』品第四十一第三に兵共手抦の儀に付て、贔負々々のさたを大将のせんさくなしに聞入、上の手抦を下にし、下を上にし、或は中を上にしてみだりに所領を下され、同し言葉の情も右の如く漫りなれば、よき者曲なく存知、忠功もうすくなる、此作法のうへは未練の人々は迯ても苦しからずとて、ぶせんさくなるを悅ぶ侍仕合よき故、万事ぶあんないにて適々人をほむれ共、辻切·辻相撲にて血もつかざる喧嘩したる者共を、むだとほめて覚の者の様に申たて、馳走してほむる事、武士のはたらき善悪無案内故也、左様の者は本の事にてなき故、