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甲陽軍鑑 / 品第四十

內藤修理手を合て、さても殊勝也、他宗にちがふて造作も御座なき御宗旨哉、一尊の施し萬人にわたるとは珍敷き、先づ重寶なる一向宗かなとほむれば、上人悅んで、さる程に我宗ほど殊勝なるはなしと上人いんげん也、然れば內藤修理自身上人の膳をすへ、殘り百人餘りの坊主達に一切膳をすへず、是れはいかんと坊主達申して膳をこへば、そこにて內藤修理申さるゝは、いやはや御口のちがうたる事哉、上人さへまいり候はゝ脇々の坊主だちははら一ぱいかと存知て如此と申す、其後は坊主達侘言して亡者にも膳をすへ、みなの坊主も餘宗のごとくに執り行ふは內藤修理理窟の故一向宗恥をかく也、

新字:内藤修理手を合て、さても殊勝也、他宗にちがふて造作も御座なき御宗旨哉、一尊の施し万人にわたるとは珍敷き、先づ重宝なる一向宗かなとほむれば、上人悦んで、さる程に我宗ほど殊勝なるはなしと上人いんげん也、然れば内藤修理自身上人の膳をすへ、残り百人余りの坊主達に一切膳をすへず、是れはいかんと坊主達申して膳をこへば、そこにて内藤修理申さるゝは、いやはや御口のちがうたる事哉、上人さへまいり候はゝ脇々の坊主だちははら一ぱいかと存知て如此と申す、其後は坊主達侘言して亡者にも膳をすへ、みなの坊主も余宗のごとくに執り行ふは内藤修理理窟の故一向宗恥をかく也、

書き下し

内藤修理手を合て、さても殊勝也、他宗にちがふて造作も御座なき御宗旨哉、一尊の施し万人にわたるとは珍敷き、先づ重宝なる一向宗かなとほむれば、上人悅んで、さる程に我宗ほど殊勝なるはなしと上人いんげん也、然れば内藤修理自身上人の膳をすへ、残り百人余りの坊主達に一切膳をすへず、是れはいかんと坊主達申して膳をこへば、そこにて内藤修理申さるゝは、いやはや御口のちがうたる事哉、上人さへまいり候はゝ脇々の坊主だちははら一ぱいかと存知て如此と申す、其後は坊主達侘言して亡者にも膳をすへ、みなの坊主も余宗のごとくに執り行ふは内藤修理理窟の故一向宗恥をかく也、

現代語訳

内藤修理は手を合わせて、さても殊勝である、他宗と違って造作もない御宗旨であることよ、一尊への施しが万人に渡るとは珍しい、まずは重宝な一向宗であることよと褒めると、上人は喜んで、さるほどに我が宗ほど殊勝なものはないと上人は引見である。しかるに内藤修理は自身で上人の膳を据え、残り百人あまりの坊主たちには一切膳を据えない。これはどうしたことかと坊主たちが申して膳を乞えば、そこで内藤修理が申されるには、いやはや、御口の違ったことであるな、上人さえ召し上がれば脇々の坊主たちは腹一杯かと存じてこのとおりだと申す。その後は坊主たちが詫び言をして亡者にも膳を据え、みなの坊主も他宗のように執り行うのは、内藤修理の理屈のゆえに一向宗が恥をかくのである。

解説

相手の理屈を褒めてから、その理屈をそのまま相手に適用する。上人にだけ膳を据えて百人には出さず、一尊への施しが万人に渡るのでしょうと言ってのける。論破ではなく、相手の言葉を使って相手に返すやり方で、結局は膳が亡者にも据えられた。論破ではなく、相手の言葉を使って相手に返すやり方である。結局は膳が亡者にも据えられ、理屈も面目も両方が立つ形で収まっている。
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この章句が説くこと

内藤一向宗理屈返し膳恥

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