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後世への最大遺物 / 第二回・もう一度書き直せ

しかしながらその間に己で己に帰っていうに「トーマス・カーライルよ、汝は愚人である、汝の書いた『革命史』はソンナに貴いものではない、第一に貴いのは汝がこの艱難に忍んでそうしてふたたび筆を執ってそれを書き直すことである、それが汝の本当にエライところである、実にそのことについて失望するような人間が書いた『革命史』を社会に出しても役に立たぬ、それゆえにモウ一度書き直せ」といって自分で自分を鼓舞して、ふたたび筆を執って書いた。その話はそれだけの話です。しかしわれわれはそのときのカーライルの心中にはいったときには実に推察の情溢るるばかりであります。カーライルのエライことは『革命史』という本のためにではなくして、火にて焼かれたものをふたたび書き直したということである。

書き下し

しかしながら、その間に己で己に帰っていうに「トーマス・カーライルよ、汝は愚人である、汝の書いた『革命史』はそんなに貴いものではない、第一に貴いのは汝がこの艱難に忍んで、そうしてふたたび筆を執ってそれを書き直すことである、それが汝の本当にえらいところである、実にそのことについて失望するような人間が書いた『革命史』を社会に出しても役に立たぬ、それゆえにもう一度書き直せ」といって自分で自分を鼓舞して、ふたたび筆を執って書いた。その話はそれだけの話です。しかしわれわれは、そのときのカーライルの心中にはいったときには、実に推察の情溢るるばかりであります。カーライルのえらいことは『革命史』という本のためにではなくして、火にて焼かれたものをふたたび書き直したということである。

現代語訳

しかしその間に、自分で自分に立ち返って言うには、トマス・カーライルよ、お前は愚か者だ、お前が書いた『革命史』はそれほど貴いものではない。第一に貴いのは、お前がこの苦難に耐えて、再び筆を執って書き直すことだ。それがお前の本当に偉いところだ。実にこのことで失望するような人間が書いた『革命史』を世に出しても役に立たない。だからもう一度書き直せ、と。そう自分で自分を励まし、再び筆を執って書きました。話はそれだけです。しかし私たちは、そのときのカーライルの心中に入ってみると、察する思いが溢れるばかりです。カーライルが偉いのは、『革命史』という本のためではなく、火で焼かれたものを再び書き直したということです。

解説

この講演でもっとも力のこもる一段です。カーライルが自分に言った言葉が引かれ、本より書き直すことのほうが貴いと述べられます。しかも理屈が通っていて、これで失望するような人間が書いた革命史なら世に出しても役に立たない、という。作品の質は書き手の生涯に支えられているという考えです。そして結論が置かれます。偉いのは本ではなく、焼かれたものをもう一度書いたこと。生涯が最大の遺物だという主張が、ここで具体的な姿を取りました。

この章句が説くこと

再起忍耐生涯著作自己

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