師導古典を学びたいすべての人に

後世への最大遺物 / 第二回・十日ばかりぼんやりとして

死んだものはモウ活き帰らない。それがために腹を切ったところが、それまでであります。それで友人に話したところが、友人も実にドウすることもできないで一週間黙っておった。何といってよいかわからぬ。ドウモ仕方がないから、そのことをカーライルにいった。そのときにカーライルは十日ばかりぼんやりとして何もしなかったということであります。さすがのカーライルもそうであったろうと思います。それで腹が立った。ずいぶん短気の人でありましたから、非常に腹を立てた。彼はそのときは歴史などは抛りぽかして何にもならないつまらない小説を読んだそうです。

書き下し

死んだものはもう活き帰らない。それがために腹を切ったところが、それまでであります。それで友人に話したところが、友人も実にどうすることもできないで一週間黙っておった。何といってよいかわからぬ。どうも仕方がないから、そのことをカーライルにいった。そのときにカーライルは十日ばかりぼんやりとして何もしなかったということであります。さすがのカーライルもそうであったろうと思います。それで腹が立った。ずいぶん短気の人でありましたから、非常に腹を立てた。彼はそのときは歴史などは抛りぽかして、何にもならないつまらない小説を読んだそうです。

現代語訳

死んだものはもう生き返らない。そのために腹を切ったところで、それまでです。友人に話したところ、友人も実際どうすることもできず、一週間黙っていました。何と言ってよいか分からない。どうしようもないので、そのことをカーライルに言いました。そのときカーライルは十日ばかりぼんやりとして何もしなかったそうです。さすがのカーライルもそうだっただろうと思います。それで腹が立った。ずいぶん短気な人でしたから、非常に腹を立てた。彼はそのとき歴史などは放り出して、何にもならないつまらない小説を読んだそうです。

解説

偉人の立ち直りが、即座ではなかったことが丁寧に記録されます。十日ぼんやりし、腹を立て、つまらない小説を読んだ。この描写が入るかどうかで、この話の値打ちがまるで変わります。すぐに立ち上がった英雄譚なら真似のしようがないが、十日無為に過ごしたのなら手が届く。内村がこの逸話を長く語るのは、最大遺物が特別な人のものではないと示すためなので、ここは省けない段です。

この章句が説くこと

喪失失意回復人間味時間

関連する章句

この一句を、あなたの毎日に。

古典の教えを、今の状況に当てはめて考えてみる——師導があなたの学びと選択を支えます。

師導で古典を学ぶ
いま登録すると、7日間すべての機能を無料でお試しいただけます。 無料ではじめる