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後世への最大遺物 / 第二回・讃美歌一篇のほうがよい

チョット考えてみるとこれはただチャールス・ウェスレーを尊敬するあまりに発した言葉であって、けっしてビーチャーの心のなかから出た言葉ではないように思われますけれども、しかしながらウェスレーのこの歌をいく度か繰り返して歌ってみまして、どれだけの心情、どれだけの趣味、どれだけの希望がそのうちにあるかを見るときには、あるいはビーチャーのいったことが本当であるかも知れないと思います。ビーチャーの大事業もけっしてこの一つの讃美歌ほどの事業をなしていないかも知れませぬ。それゆえにもしわれわれに思想がありまするならば、もしわれわれがそれを直接に実行することができないならば、それを紙に写しましてこれを後世に遺しますことは大事業ではないかと思います。文学者の事業というものはそれゆえに羨むべき事業である。

書き下し

ちょっと考えてみると、これはただチャールス・ウェスレーを尊敬するあまりに発した言葉であって、けっしてビーチャーの心のなかから出た言葉ではないように思われますけれども、しかしながらウェスレーのこの歌をいく度か繰り返して歌ってみまして、どれだけの心情、どれだけの趣味、どれだけの希望がそのうちにあるかを見るときには、あるいはビーチャーのいったことが本当であるかも知れないと思います。ビーチャーの大事業も、けっしてこの一つの讃美歌ほどの事業をなしていないかも知れませぬ。それゆえに、もしわれわれに思想がありまするならば、もしわれわれがそれを直接に実行することができないならば、それを紙に写しまして、これを後世に遺しますことは大事業ではないかと思います。文学者の事業というものは、それゆえに羨むべき事業である。

現代語訳

ちょっと考えると、これはチャールズ・ウェスレーを尊敬するあまり出た言葉で、決してビーチャーの本心ではないように思われます。けれどもウェスレーのこの歌を何度か繰り返し歌ってみて、どれほどの心情、どれほどの味わい、どれほどの希望がその中にあるかを見るときは、あるいはビーチャーの言ったことが本当かもしれないと思います。ビーチャーの大事業も、決してこの一篇の讃美歌ほどの働きはしていないかもしれません。ですから、もし私たちに思想があるなら、もしそれを直接実行できないなら、それを紙に写して後世に遺すことは大事業ではないかと思います。文学者の事業とは、だから羨むべき事業なのです。

解説

謙遜の言葉かと疑ったうえで、歌を実際に繰り返し歌ってみて、やはり本心だろうと判断し直す。この検証の手つきに内村らしさがあります。人の言葉を額面で受け取らず、自分で確かめてから同意する。そして思想の節の結論が置かれます。実行できないなら紙に写せ、それも大事業だ、と。金も地位もない人に向けて用意された第三の答えが、ここで完結します。次からは、その第三の答えすら持たない人に向けた最後の答えへ移ります。

この章句が説くこと

讃美歌検証思想著述価値

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