鬼谷子 / 本経陰符七術
故智者不以言失人之言、故辭不煩而心不虛、志不亂而意不邪。當其難易、而後爲之謀、因自然之道以爲實。圓者不行、方者不止、是謂大功。益之損之、皆爲之辭。用分威散勢之權、以見其兊威、其機危乃爲之決。故善損兊者、譬若決水於千仭之堤、轉圓石於萬仭之谿、而能行此者、形勢不得不然也。
新字:故智者不以言失人之言、故辞不煩而心不虚、志不乱而意不邪。当其難易、而後為之謀、因自然之道以為実。円者不行、方者不止、是謂大功。益之損之、皆為之辞。用分威散勢之権、以見其兊威、其機危乃為之決。故善損兊者、譬若決水於千仭之堤、転円石於万仭之谿、而能行此者、形勢不得不然也。
書き下し
故に智者は言を以て人の言を失わず。故に辭は煩わしからずして心は虛しからず、志は亂れずして意は邪ならず。其の難易に當たりて、而る後に之が謀を爲し、自然の道に因りて以て實を爲す。圓なる者は行かず、方なる者は止まらず。是を大功と謂う。之を益し之を損じ、皆な之が辭を爲す。分威散勢の權を用いて、以て其の兊威を見る。其の機危乃ち之が決を爲す。故に善く損兊する者は、譬えば水を千仭の堤に決し、圓石を萬仭の谿に轉ずるが若し。而して能く此を行う者は、形勢の然らざるを得ざるなり。
現代語訳
だから知者は、自分の言葉によって人の言葉を失わせない。だから言葉は煩わしくなく、心は虚しくない。志は乱れず、意はよこしまでない。その難易に当たってから、そのための謀りをなし、おのずとそうである道に沿って実を成す。円いものは行かず、方いものは止まらない。これを大功という。増やすことも減らすことも、みなそのための言葉を用意する。威を分かち勢いを散らすはかりごとを用いて、その兌の威を見る。その機とその危うさにおいて、そこで決する。だからよく損兌する者は、たとえて言えば千仞の堤で水を切って落とし、丸い石を万仞の谷に転がすようなものである。そしてこれを行える者は、形勢がそうならざるをえないところまで持っていっているのである。
解説
「智者は言を以て人の言を失わず」——自分が話すことで、相手の言葉を奪わない。よく話す人ほど、相手の言葉を消してしまいます。そして結びの比喩が有名です。千仞の堤を切って水を落とし、丸い石を万仞の谷に転がす。決断とは、力を込めて押すことではなく、そうならざるをえないところまで持っていって、最後に手を離すことだ、と。「形勢の然らざるを得ざるなり」——形勢がそうならざるをえない。準備が終わっていれば、決断そのものには力が要りません。決断が重く感じるとき、足りないのは覚悟ではなく準備です。
この章句が説くこと
言を以て人の言を失わず水を千仞の堤に決す形勢の然らざるを得ざるなり決断準備実行
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