鬼谷子 / 決篇
聖人所以能成其事者有五、有以陽徳之者、有以隂賊之者、有以信誠之者、有以蔽匿之者、有以平素之者。陽勵於一言、隂勵於二言、平素樞機、以用四者、㣲而施之。
新字:聖人所以能成其事者有五、有以陽徳之者、有以陰賊之者、有以信誠之者、有以蔽匿之者、有以平素之者。陽勵於一言、陰勵於二言、平素枢機、以用四者、㣲而施之。
書き下し
聖人の能く其の事を成す所以の者に五有り。陽を以て之に徳する者有り、隂を以て之を賊う者有り、信を以て之に誠なる者有り、蔽を以て之を匿す者有り、平素を以てする者有り。陽は一言に勵み、隂は二言に勵む。平素は樞機なり。以て四者を用うるに、㣲かにして之を施す。
現代語訳
聖人が事を成し遂げられるわけには五つある。表立って徳を施す者があり、ひそかに損なう者があり、信によって誠実である者があり、覆い隠す者があり、平素のありようによる者がある。陽は一つの言葉に励み、陰は二つの言葉に励む。平素はかなめである。この四つを用いるときは、かすかに施す。
解説
事を成す道が五つ挙げられます。表立った徳、ひそかな損傷、信と誠実、覆い隠すこと、そして平素のありよう。四つは場面ごとの手ですが、五つ目の「平素」だけが性質が違います。日ごろのありよう。それを「樞機」——かなめだと言います。手は四つあるが、それを支えるのは日ごろの状態だ、という構成です。実務でも、危機のときに打てる手の数は、平時に何を積んできたかで決まります。平素が薄い人は、いざというとき四つのうち一つか二つしか使えません。
この章句が説くこと
陽徳・陰賊・信誠・蔽匿・平素平素は枢機なり準備判断日常決断
関連する章句
-
『鬼谷子』反応篇動作言默、此と出入を與にし、喜怒此に由りて以て其の式を見る。皆な先ず定むるを以て之が法則と爲す。反を以て覆を求め、其の託する所を觀る。故に此を用うる者は、己平靜ならんと欲し、以て其の辭を聽き、其の事を察し、萬物を論じ、雄雌を別つ。
-
『鬼谷子』謀篇凡そ謀に道有り。必ず其の因る所を得て、以て其の情を求む。審らかに其の情を得て、乃ち三儀を立つ。三儀とは、上と曰い、中と曰い、下と曰う。參えて以て立てて以て奇を生ず。奇は其の壅がる所を知らず、古の從う所に始まる。故に鄭人の玉を取るや、司南の車を載す。其の惑わざるを爲すなり。夫れ材を度り、能を量り、情を揣るは、亦た事の司南なり。
-
『鬼谷子』内揵篇内とは、說辭を進むるなり。揵とは、謀る所を揵するなり。說かんと欲する者は隱れて度るを務め、事を計る者は循い順うを務む。隂かに可否を慮り、明らかに得失を言い、以て其の志を御す。方に來たらば時に應じ、以て其の謀に合わす。詳らかに來揵を思い、往きて時に應ずること當たるなり。夫れ内に合わざる者有らば、施行すべからざるなり。乃ち時宜を揣り切り、便とする所に從いて爲し、以て其の變を求む。變を以て内を求むる者は、管の揵を取るが若し。
-
『鬼谷子』決篇是に於いて之を往事に度り、之を來事に驗し、之を平素に參え、可なれば則ち之を決す。王公大人の事や、危うくして美名なる者は、可なれば則ち之を決す。力を費やすを用いずして成り易き者は、可なれば則ち之を決す。力を用い勤苦を犯し、然れども已むを得ずして之を爲す者は、可なれば則ち之を決す。患いを去る者は、可なれば則ち之を決す。福に從う者は、可なれば則ち之を決す。故に夫れ情を決し疑いを定むるは、萬事の基なり。以て亂を治め、成敗を決するは、爲し難き者なり。故に先王は乃ち蓍龜を用うる者、以て自ら決するなり。
-
『鬼谷子』忤合篇之を天下に用うれば、必ず天下を量りて之に與す。之を國に用うれば、必ず國を量りて之に與す。之を家に用うれば、必ず家を量りて之に與す。之を身に用うれば、必ず身の材能氣勢を量りて之に與す。大小進退、其の用は一なり。必ず先ず謀慮し計定めて、而して後に之を行うに飛箝の術を以てす。
-
『鬼谷子』揣篇故に國事を計る者は、則ち當に權量を審らかにすべし。人主を說く者は、則ち當に情を揣ることを審らかにすべし。謀慮情欲は、必ず此より出づ。乃ち貴かるべく、乃ち賤しかるべく、乃ち重かるべく、乃ち輕かるべく、乃ち利すべく、乃ち害すべく、乃ち成るべく、乃ち敗るべし。其の數は一なり。