鬼谷子 / 反応篇
欲聞其聲反默、欲張反歛、欲高反下、欲取反與。欲開情者、象而比之、以牧其辭。同聲相呼、實理同歸。或因此、或因彼、或以事上、或以牧下。此聽眞僞、知同異、得其情詐也。
新字:欲聞其声反黙、欲張反歛、欲高反下、欲取反与。欲開情者、象而比之、以牧其辞。同声相呼、実理同帰。或因此、或因彼、或以事上、或以牧下。此聴真偽、知同異、得其情詐也。
書き下し
其の聲を聞かんと欲せば反って默し、張らんと欲せば反って歛め、高からんと欲せば反って下り、取らんと欲せば反って與う。情を開かんと欲する者は、象して之に比し、以て其の辭を牧す。同聲相い呼び、實理は同じく歸す。或いは此に因り、或いは彼に因り、或いは以て上に事え、或いは以て下を牧す。此れ眞僞を聽き、同異を知り、其の情詐を得るなり。
現代語訳
相手の声を聞きたければ、こちらは逆に黙る。張ろうとするなら、逆に引き締める。高く出たければ、逆に下りる。取ろうとするなら、逆に与える。相手の心を開かせたい者は、かたどってたぐえ、それによってその言葉を導く。同じ声は互いに呼び合い、まことの筋道は同じところへ帰る。あるときはこちらにより、あるときはあちらにより、あるときは上に仕え、あるときは下を導く。こうして真偽を聴き分け、同じところと違うところを知り、その実情と偽りをつかむのである。
解説
四つの逆説が並びます。聞きたければ黙る、張りたければ引き締める、高く出たければ下りる、取りたければ与える。老子の「将に取らんと欲すれば必ず固く之を与う」と同じ形ですが、こちらは交渉の現場の技法として置かれています。とくに「取らんと欲せば反って與う」は、値引きや譲歩の設計そのものです。ただし注意すべきは、これが操作の技術として書かれていること。与えることで取る、という構えを相手に見抜かれれば、逆効果になります。この書がしばしば危険視されてきた理由も、この率直さにあります。
この章句が説くこと
声を聞かんと欲せば反って黙す取らんと欲せば反って与う逆説交渉傾聴駆け引き
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