鬼谷子 / 反応篇
人言者、動也、己黙者、靜也。因其言、聽其辭、言有不合者、反而求之、其應必出。言有象、事有比。其有象比、以觀其次。象者、象其事、比者、比其辭也。以無形求有聲。其釣語合事、得人實也。其猶張罝網而取獸也、多張其會而司之、道合其事、彼自出之、此釣人之網也。
新字:人言者、動也、己黙者、静也。因其言、聴其辞、言有不合者、反而求之、其応必出。言有象、事有比。其有象比、以観其次。象者、象其事、比者、比其辞也。以無形求有声。其釣語合事、得人実也。其猶張罝網而取獣也、多張其会而司之、道合其事、彼自出之、此釣人之網也。
書き下し
人の言うは、動なり。己の黙するは、靜なり。其の言に因り、其の辭を聽く。言に合わざる者有らば、反りて之を求むれば、其の應必ず出づ。言に象有り、事に比有り。其の象比有るを、以て其の次を觀る。象とは、其の事に象るなり。比とは、其の辭に比するなり。無形を以て有聲を求む。其の釣語事に合えば、人の實を得るなり。其れ猶お罝網を張りて獸を取るがごときなり。多く其の會を張りて之を司り、道其の事に合えば、彼自ら之を出だす。此れ人を釣るの網なり。
現代語訳
人が語るのは動である。自分が黙るのは静である。相手の言葉によって、その言い分を聴く。言葉に食い違うところがあれば、逆に立ち返って求めれば、その応えは必ず出てくる。言葉には象(かたどり)があり、事には比(たぐい)がある。その象と比があるのを見て、次を観る。象とはその事にかたどることであり、比とはその言葉にたぐえることである。形のないもので声あるものを求める。その釣りの言葉が事に合えば、相手の実を得る。それはちょうど網を張って獣を取るようなものだ。多くの網を集まるところに張ってこれを見張り、こちらの筋道がその事に合えば、相手のほうから出てくる。これが人を釣る網である。
解説
相手が話し、こちらが黙る。それを動と静と呼びます。そして食い違いを見つけたら、そこへ立ち返って問い返せば、必ず応えが出てくる。ここまでは傾聴の技術です。後半の比喩が秀逸で、言葉を網にたとえます。狩りの網は、獣を追いかけて捕まえるのではなく、獣が通る場所に多く張って待つ。相手を問い詰めるのではなく、相手が出てきやすい話題を複数用意して待つ。営業でも面談でも、質問で追い込むより、この張り方のほうが本音は出ます。追えば逃げる、というだけの話でもあります。
この章句が説くこと
人の言うは動己の黙するは静釣語人を釣るの網傾聴観察交渉
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