管子 / 版法解
凡衆者,愛之則親,利之則至。是故明君設利以致之,明愛以親之。徒利而不愛,則衆至而不親;徒愛而不利,則衆親而不至。愛施俱行,則説君臣,説朋友,説兄弟,説父子。愛施所設四,固不能守。故曰:「説在愛施。」凡君所以有衆者,愛施之徳也。愛有所移,利有所并,則不能盡有。故曰:「有衆在廢私。」
新字:凡衆者,愛之則親,利之則至。是故明君設利以致之,明愛以親之。徒利而不愛,則衆至而不親;徒愛而不利,則衆親而不至。愛施倶行,則説君臣,説朋友,説兄弟,説父子。愛施所設四,固不能守。故曰:「説在愛施。」凡君所以有衆者,愛施之徳也。愛有所移,利有所并,則不能尽有。故曰:「有衆在廃私。」
書き下し
凡そ衆なる者は、之を愛すれば則ち親しみ、之を利すれば則ち至る。是の故に明君は利を設けて以て之を致し、愛を明らかにして以て之に親しむ。徒だ利して愛せざれば、則ち衆至るも親しまず。徒だ愛して利せざれば、則ち衆親しむも至らず。愛施俱に行わるれば、則ち君臣を説び、朋友を説び、兄弟を説び、父子を説ぶ。愛施の設くる所四つ、固より守る能わず。故に曰く、「説は愛施に在り」と。凡そ君の衆を有つ所以の者は、愛施の德なり。愛に移す所有り、利に并す所有れば、則ち盡くは有つ能わず。故に曰く、「衆を有つは私を廢するに在り」と。
現代語訳
人々は、愛されれば親しみ、利されれば集まる。だから明主は利を設けて集め、愛を明らかにして親しませる。ただ利するだけで愛さなければ、人々は集まっても親しまない。ただ愛するだけで利さなければ、人々は親しんでも集まらない。愛と施しがともに行われれば、君臣を喜ばせ、友を喜ばせ、兄弟を喜ばせ、父子を喜ばせる。愛と施しを置くところは四つあり、そこを外れては守りきれない。だから、喜びは愛と施しにある、という。君が人々を保てるのは、愛と施しの徳による。愛を別のところへ移し、利を一つに集めてしまえば、すべてを保つことはできない。だから、人々を保つのは私を廃することにある、という。
解説
利だけでは集まっても親しまれず、愛だけでは親しまれても集まらない。二つを分けて、それぞれの効き目を書いた段です。両方あって、君臣も友も兄弟も父子も喜ぶ。締めが厳しく、愛をどこかへ寄せ、利を一つに集めれば、全部は保てない。私を廃することが、人々を保つ条件でした。
この章句が説くこと
凡そ衆なる者は之を愛すれば則ち親しみ之を利すれば則ち至る徒だ利して愛せざれば則ち衆至るも親しまず徒だ愛して利せざれば則ち衆親しむも至らず衆を有つは私を廃するに在り愛利
関連する章句
-
論語・憲問篇子曰く、之を愛して、能く労すること勿からんや。焉に忠にして、能く誨うること勿からんや。
-
論語・里仁篇子曰わく、ただ仁者のみよく人を好み、よく人を悪む。
-
牧民忠告・拜命赤子の生まるるや、知識有ること無し、然れども之を母たる者は常に意を先んじて其の欲する所を得。其の理他無し、誠然(せいぜん)たるのみ。誠は愛を生じ、愛は智を生ず。惟(こ)れ其れ誠なり、故に愛周(あまね)からざる無し。惟れ其れ愛なり、故に智及ばざる無し。吏の民に於けるや、是と奚(なん)ぞ異ならんや。誠に子民(しみん)の心有らば、則ち其の才智の及ばざるを患えず。
-
孫子・九地篇利に合いて動き、利に合わずして止まる。
-
孫子・勢篇故に善く敵を動かす者は、之に形すれば敵必ず之に従い、之に予うれば敵必ず之を取る。利を以て之を動かし、卒を以て之を待つ。
-
司馬法・仁本義を争いて利を争わず、是を以てその義を明らかにするなり。