管子 / 度地
桓公曰:「凡一年之中,十二月作土功,有時則為之,非其時而敗,將何以待之?」管仲對曰:「常令水官之吏,冬時行隄防,可治者,章而上之都,都以春少事作之。已作之後,常案行。隄有毁,作大雨,各葆其所。可治者,趣治。以徒給大雨,隄防可衣者衣之,衝水可据者据之,終嵗以毋敗為固此謂備之常時,禍何從來?所以然者,獨水蒙壤自塞而行者,江、河之謂也,嵗髙其隄,所以不沒也。春冬取土於中,秋夏取土於外。濁水入之,不能為敗。」桓公曰:「善。仲父之語寡人畢矣,然則寡人何事乎哉?亟為寡人教側臣。」
新字:桓公曰:「凡一年之中,十二月作土功,有時則為之,非其時而敗,将何以待之?」管仲対曰:「常令水官之吏,冬時行隄防,可治者,章而上之都,都以春少事作之。已作之後,常案行。隄有毁,作大雨,各葆其所。可治者,趣治。以徒給大雨,隄防可衣者衣之,衝水可据者据之,終歳以毋敗為固此謂備之常時,禍何従来?所以然者,独水蒙壤自塞而行者,江、河之謂也,歳高其隄,所以不没也。春冬取土於中,秋夏取土於外。濁水入之,不能為敗。」桓公曰:「善。仲父之語寡人畢矣,然則寡人何事乎哉?亟為寡人教側臣。」
書き下し
桓公曰く、「凡そ一年の中、十二月に土功を作すに、時有れば則ち之を為し、其の時に非ずして敗る。將に何を以て之を待たんとする」と。管仲對えて曰く、「常に水官の吏をして、冬時に隄防を行らしめ、治む可き者は、章して之を都に上らしめ、都は春の少事を以て之を作す。已に之を作すの後、常に案行す。隄に毁有らば、大雨を作すも、各おの其の所を葆つ。治む可き者は、趣かに治む。徒を以て大雨に給し、隄防の衣す可き者は之に衣せ、衝水の据う可き者は之を据え、歲を終うるまで敗る毋きを以て固と為す。此れを之に備うるに常時を以てすと謂う。禍何くより來たらんや。然る所以の者は、獨り水壤を蒙りて自ら塞ぎて行く者は、江・河の謂いなり。歲ごとに其の隄を髙くするは、沒せざる所以なり。春冬は土を中に取り、秋夏は土を外に取る。濁水之に入るも、敗を為す能わず」と。桓公曰く、「善し。仲父の寡人に語ること畢われり。然らば則ち寡人何をか事とせんや。亟やかに寡人の為に側臣に教えよ」と。
現代語訳
桓公が言った。一年のうち十二か月、土木の仕事をするのに、時があればやるが、時でなければ壊れる。ではどうやってそれに備えるのか。管仲が答えた。いつも水の官の吏に、冬のうちに堤を見回らせ、直せるところは書き出して都に上げさせ、都は春の仕事の少ない時期にそれを行います。作ったあとも、いつも見て回ります。堤に壊れがあれば、大雨のときも、それぞれ持ち場を守ります。直せるところはすぐに直す。人手を大雨に回し、堤で覆えるところは覆い、水がぶつかるところで押さえられるところは押さえ、一年を通じて壊れないことを固いとします。これを、常のときに備えるといいます。禍はどこから来るでしょうか。そうなる理由は、水だけが土を巻き込んで自分で塞ぎながら流れるからで、これは長江や黄河のことです。年ごとに堤を高くするのは、沈まないためです。春と冬は内側から土を取り、秋と夏は外側から土を取る。濁った水が入ってきても、壊すことはできません。桓公が言った。よい。仲父が私に語ることは終わった。ならば私は何をすればよいのか。すぐに私のためにそばの臣たちに教えてほしい。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
-
『管子』度地桓公曰く、「當に何れの時に之を作すべきか」と。管子曰く、「春三月は、天地乾燥し、水糾列するの時なり。山川涸落し、天氣下り、地氣上り、萬物交通す。故事已み、新事未だ起こらず、草木荑生して食う可し。寒暑調い、日夜分かる。分の後は、夜日に益々短く、晝日に益々長し、以て土功の事を作すに利あり。土乃ち益々剛し。甲士をして隄を大水の旁らに作らしめ、其の下を大にし、其の上を小にし、水に隨いて行く。地に草を生ぜざる者有らば、必ず之が囊を為す。大なる者は之が隄を為し、小なる者は之が防を為し、水を夾むこと四道、禾稼傷なわれず。歲ごとに埤增し、樹うるに荆棘を以てして、以て其の地を固くし、之に襍うるに栢楊を以てして、以て決水に備う。民其の饒を得、是を流膏と謂う。下貧をして之を守らしめ、往往にして界を為せば、以て敗るる無かる可し。
-
『管子』度地桓公曰く、「寡人悖なり、四害の服するを知らず、奈何」と。管仲對えて曰く、「冬に土功を作し、地藏を發けば、則ち夏に暴雨多く、秋霖止まず。春に枯骨朽脊を収めず、枯木を伐りて之を去らざれば、則ち夏旱至らん。夏に大露有り、原煙噎し、百草に下る、人采りて之を食えば、人を傷り、人多く疾病して止まず。民乃ち恐殆す。君五官の吏と、三老・里有司・伍長とに令して、里を行きて之に順い、之に令して家ごとに火を起こして其の田を温めしめ、及び宫中皆な井を蓋わしめ、毒をして下りて食器に及ばしむる毋かれ、將に飲みて人を傷らんとす。下蟲有りて禾稼を傷る。凡そ天菑の害の下るや、君子は謹みて之を避く、故に九死に入らざるなり。大寒大暑、大風大雨、其の至ること時ならざる者、此れを四刑と謂う。或いは遇いて以て死し、或いは遇いて以て生く、君子は之を避く、是れ亦た人を傷るなり。故に吏なる者は、順を教うる所以なり。三老・里有司・伍長なる者は、率を為す所以なり。五者已に具わりて、民に願う者無し、其の畢わるを願うなり。故に常に冬日を以て、三老・里有司・伍長に順い、冬を以て賞罰し、各おの其の賞に應じて其の罰に服せしむ。五者害す可からざれば、則ち君の法犯さる。此れ民に示して見易し、故に民比せざるなり」と。
-
『管子』度地桓公曰く、「請う問う、五害に備うるの道」と。管子對えて曰く、「請う五害の説を除くに、水を以て始めと為さん。請う為に水官を置き、水に習う者をして吏大夫と為し、大夫の佐各おの一人、部を率いる校長・官佐各おの財足らしめ、乃ち水の左右各おの一人を取り、使て都匠水工と為し、之をして水道を行らしめん。城郭・堤川・溝池、官府寺舍及び州中の當に繕治すべき者には、卒を給し財を足らしむ。令に曰く、常に秋歲末の時を以て、其の民を閲し、家人を案じ地を比べ、什伍口數を定め、男女大小を別つ。其の用を為さざる者は輒ち之を免じ、錮病ありて作す可からざる者は之を疾とし、作を省く可き者は之を半事とす。并せ行いて、以て甲士の當に兵を被るべきの數を定め、其の都に上る。
-
『管子』度地夏三月に當たりては、天地の氣壯んに、大暑至り、萬物榮華す。以て疾く草薉を殺すに利あり、令をして擾さんと欲せざらしむ、命じて不長と曰う。土功の事を作すに利あらず、農に放かしむ。利皆な十分の五を耗し、土功成らず。秋三月に當たりては、山川百泉踊り、雨降り下り、山水出で、海路距たり、雨露屬き、天地湊汐す。以て疾く作して収斂し留むる毋きに利あり。一日に把れば、百日に餔らう。民男女と無く、皆な野に行く。土功の事を作すに利あらず。濡濕日に生じ、土弱くして成り難く、利は什分の六を耗し、土工の事も亦た立たず。冬三月に當たりては、天地閉藏し、暑雨止み、大寒起こり、萬物實り熟す。以て空郄を填塞し、邊城を繕い、郭術を塗り、度量を平らかにし、權衡を正し、牢獄を虚しくし、廥倉を實たすに利あり。君は樂を修め、神明と相望む。凡そ一年の事畢わる。功有るを舉げ、賢を賞し、罪有るを罰し、有司の吏を遷して之を第す。土工の事を作すに利あらず、利は什分の七を耗し、土剛くして立たず。晝日に益々短く、夜日に益々長し、以て室を作すに利あり、以て堂を作すに利あらず。四時以て得れば、四害皆な服す。」
-
『管子』度地桓公曰く、「願わくは水害を聞かん」と。管仲對えて曰く、「水に大小有り、又た逺近有り。水の山より出でて海に流れ入る者を、命じて經水と曰う。水の他水に別れて、大水及び海に入る者を、命じて枝水と曰う。山の溝、一に水有り、一に水無き者を、命じて谷水と曰う。水の他水の溝より出でて、大水及び海に流るる者を、命じて川水と曰う。地を出でて流れざる者を、命じて淵水と曰う。此の五水なる者は、其の利に因りて之に往くも可なり、因りて之を扼するも可なり。而して久しく常ならざれば、危殆有り」と。桓公曰く、「水は扼して東西南北及び髙からしむ可きか」と。管仲對えて曰く、「可なり。夫れ水の性、髙きを以て下に走れば則ち疾く、石に至る。而して下より髙きに向かえば、卽ち留まりて行かず。故に其の上領を髙くして之を瓴し、尺に十分の三有り、里四十九に滿つる者は、水走らしむ可きなり。乃ち其の道を迂して之を逺くし、勢を以て之を行らしむ。水の性、行きて曲に至れば必ず留退し、滿つれば則ち後前を推す。地下ければ則ち平らかに行き、地髙ければ卽ち控え、杜曲なれば則ち擣毁し、杜曲激すれば則ち躍り、躍れば則ち倚り、倚れば則ち環り、環れば則ち中し、中すれば則ち涵し、涵すれば則ち塞ぎ、塞げば則ち移り、移れば則ち控え、控うれば則ち水妄りに行く。水妄りに行けば則ち人を傷り、人を傷れば則ち困しみ、困しめば則ち法を輕んじ、法を輕んずれば則ち治め難く、治め難ければ則ち不孝、不孝なれば則ち臣たらず。故に五害の屬、傷殺の類、禍福同じきなり。此の五つを備うるを知れば、人君天地たり」と。
-
『管子』度地都は以て下に臨み、餘り有ると足らざるの處を視て、輒ち水官に下す。水官も亦た甲士の當に兵を被るべきの數を以てす。三老・里有司・伍長と里を行き、父母に因りて案行して備水の器を閲具す。冬事無きの時を以て、籠臿板築各おの什の六、土車は什の一、雨輂は什の二、食器は兩具、人ごとに之を有つ。里中に錮藏して、以て喪器に給す。後常に水官の吏と都匠とをして、三老・里有司・伍長に因りて之を案行せしむ。常に朔日を以て始めて出だして之を具閲し、完堅を取り、久しきを補い、苦惡を去る。常に冬少事の時を以て、甲士をして更次を以て薪を益さしめ、之を水の旁らに積み、州大夫之を將いて、唯だ時に後るる毋からしむ。其の薪を積むや、事の己むを以てす。其の土を作すや、事の未だ起こらざるを以てす。天地和調し、日長久有り。此を以て之を觀れば、其の利百倍す。故に常に事無きに器を具え、事有れば之を用う。水常に制す可くして、敗るる毋からしむ。此れ素より備え有りて豫め具うる者と謂うなり。