管子 / 治國
故先王使農士商工四民交能易作,終嵗之利,無道相過也,是以民作一而得均。民作一則田墾,姦巧不生。田墾則粟多,粟多則國富。姦巧不生則民治。富而治,此王之道也。不生粟之國亡,粟生而死者霸,粟生而不死者王。粟也者,民之所歸也;粟也者,財之所歸也;粟也者,地之所歸也。粟多,則天下之物盡至矣。故舜一徙成邑,二徙成都,參徙成國。舜非嚴刑罰,重禁令,而民歸之矣,去者必害,從者必利也。先王者,善為民除害興利,故天下之民歸之。
新字:故先王使農士商工四民交能易作,終歳之利,無道相過也,是以民作一而得均。民作一則田墾,姦巧不生。田墾則粟多,粟多則国富。姦巧不生則民治。富而治,此王之道也。不生粟之国亡,粟生而死者覇,粟生而不死者王。粟也者,民之所帰也;粟也者,財之所帰也;粟也者,地之所帰也。粟多,則天下之物尽至矣。故舜一徙成邑,二徙成都,参徙成国。舜非厳刑罰,重禁令,而民帰之矣,去者必害,従者必利也。先王者,善為民除害興利,故天下之民帰之。
書き下し
故に先王は農士商工の四民をして能を交え作を易えしめ、歲を終うるの利、相過ぐるに道無きなり。是を以て民は一を作して均しきを得。民一を作せば則ち田墾かれ、姦巧生ぜず。田墾かるれば則ち粟多く、粟多ければ則ち國富む。姦巧生ぜざれば則ち民治まる。富みて治まる、此れ王の道なり。粟を生ぜざるの國は亡び、粟生じて死する者は霸たり、粟生じて死せざる者は王たり。粟なる者は、民の歸する所なり。粟なる者は、財の歸する所なり。粟なる者は、地の歸する所なり。粟多ければ、則ち天下の物盡く至る。故に舜は一たび徙りて邑を成し、二たび徙りて都を成し、三たび徙りて國を成す。舜は刑罰を嚴にし禁令を重くするに非ずして、民之に歸せしは、去る者は必ず害あり、從う者は必ず利あればなり。先王なる者は、善く民の為に害を除き利を興す、故に天下の民之に歸す。
現代語訳
だから先の王は、農と士と商と工の四つの民が互いの能を交え仕事を替えられるようにし、一年の利がかけ離れないようにした。だから民は一つの仕事に励んで、しかも釣り合いが取れた。民が一つの仕事に励めば田は開かれ、ずるい細工は生まれない。田が開かれれば穀物は多く、穀物が多ければ国は富む。ずるい細工が生まれなければ民は治まる。富んで治まる。これが王の道である。穀物を生まない国は滅び、穀物が生まれても死なせる者は覇者となり、穀物が生まれて死なせない者は王となる。穀物は民が帰するところであり、財が帰するところであり、土地が帰するところである。穀物が多ければ、天下の物はすべて集まってくる。だから舜は一度移って邑を成し、二度移って都を成し、三度移って国を成した。舜は刑罰を厳しくし禁令を重くしたのではない。それでも民が帰したのは、去る者には必ず害があり、従う者には必ず利があったからである。先の王は、民のためによく害を除き利を興した。だから天下の民が帰した。
解説
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『管子』治國凡そ國を為むるの急なる者は、必ず先ず末作文巧を禁ず。末作文巧禁ぜらるれば、則ち民に游食する所無し。民に游食する所無ければ、則ち必ず農す。民農を事とすれば則ち田墾かれ、田墾かるれば則ち粟多く、粟多ければ則ち國富み、國富める者は兵彊く、兵彊き者は戰い勝ち、戰い勝つ者は地廣し。是を以て先王は民を衆くし、兵を彊くし、地を廣くし、國を富ますは必ず粟より生ずるを知る、故に末作を禁じ、奇巧を止めて、農事を利す。今末作奇巧を為す者は、一日作りて五日食う。農夫は歲を終うるの作、以て自ら食するに足らざるなり。然らば則ち民は本事を舍てて末作を事とす。本事を舍てて末作を事とすれば、則ち田荒れて國貧しきなり。
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『管子』治國凡そ國を治むるの道は、必ず先ず民を富ます。民富めば則ち治め易きなり。民貧しければ則ち治め難きなり。奚を以て其の然るを知るや。民富めば則ち鄉に安んじ家を重んず。鄉に安んじ家を重んずれば則ち上を敬い罪を畏る。上を敬い罪を畏るれば則ち治め易きなり。民貧しければ則ち鄉を危うくし家を輕んず。鄉を危うくし家を輕んずれば則ち敢えて上を陵ぎ禁を犯す。上を陵ぎ禁を犯せば則ち治め難きなり。故に治國は常に富み、亂國は常に貧し。是を以て善く國を為むる者は、必ず先ず民を富まし、然る後に之を治む。昔者七十九代の君、法制一ならず、號令同じからざるも、然れども俱に天下に王たりし者は、何ぞや。必ず國富みて粟多ければなり。夫れ國を富まし粟を多くするは、農より生ず、故に先王之を貴ぶ。
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『管子』君臣下明君上に在り、忠臣之を佐くれば、則ち民を齊うるに政刑を以てす。衣食の利に牽かるる、故に愿にして使い易く、愚にして塞ぎ易し。君子は道に食み、小人は力に食む、民を分かつなり。威は勢無ければ立つ所無く、事は為す無ければ生ずる所無し。此くの若くんば則ち國平らかにして姦省かる。君子道に食めば、則ち義審らかにして禮明らかなり。義審らかにして禮明らかなれば、則ち倫等踰えず。偏卒の大夫有りと雖も、敢えて幸心有らざれば、則ち上に危うき無し。齊民力に食めば、則ち本を作す。本を作す者衆ければ、農以て命を聽く。是を以て明君世に立つや、民の上に制せらるるは、猶お草木の時に制せらるるがごときなり。故に民迂れば則ち之を流し、民流れ通ずれば則ち之を迂す。之を決すれば則ち行き、之を塞げば則ち止む。明君有りて能く之を決し、又た能く之を塞ぐ。之を決すれば則ち君子は禮に行い、之を塞げば則ち小人は農に篤し。君子禮に行えば、則ち上尊くして民順う。小民農に篤ければ、則ち財厚くして備え足る。上尊くして民順い、財厚くして備え足れば、四者體に備わり、頃時にして王たること難からず。
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『管子』治國所謂利を興すとは、農事を利するなり。所謂害を除くとは、農事を害するを禁ずるなり。農事勝れば則ち粟を入るること多く、粟を入るること多ければ則ち國富み、國富めば則ち鄉に安んじ家を重んず。鄉に安んじ家を重んずれば、則ち俗を變じ習を易え、衆を敺り民を移し、之を殺すに至ると雖も、民惡まざるなり。此れ粟に務むるの功なり。上農を利せざれば則ち粟少なく、粟少なければ則ち人貧しく、人貧しければ則ち家を輕んじ、家を輕んずれば則ち去り易く、去り易ければ則ち上令必ずしも行う能わず、上令必ずしも行う能わざれば則ち禁必ずしも止むる能わず、禁必ずしも止むる能わざれば則ち戰いて必ずしも勝たず、守りて必ずしも固からず。夫れ令必ずしも行われず、禁必ずしも止まらず、戰いて必ずしも勝たず、守りて必ずしも固からざる、之を命づけて寄生の君と曰う。此れ農を利せず粟少なきの害に由るなり。粟なる者は、王の本事なり、人主の大務、人を有つの塗、國を治むるの道なり。
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『管子』牧民凡そ地を有ちて民を牧う者は、務めは四時に在り、守りは倉廩に在り。國に財多ければ則ち遠き者來たり、地辟け舉がれば則ち民留まり處り、倉廩實つれば則ち禮節を知り、衣食足れば則ち榮辱を知り、上度に服せば則ち六親固く、四維張れば則ち君令行わる。故に刑を省くの要は、文巧を禁ずるに在り。國を守るの度は、四維を飾るに在り。民に順うの經は、鬼神を明らかにし、山川を祗み、宗廟を敬い、祖舊を恭しむに在り。天の時に務めざれば則ち財生ぜず、地の利に務めざれば則ち倉廩盈たず。野蕪れ曠しければ則ち民乃ち菅らかに、上量無ければ則ち民乃ち妄りなり。文巧禁ぜざれば則ち民乃ち淫し、兩原を璋がざれば則ち刑乃ち繁し。鬼神を明らかにせざれば則ち陋民悟らず、山川を祗まざれば則ち威令聞かれず、宗廟を敬わざれば則ち民乃ち上を校り、祖舊を恭しまざれば則ち孝悌備わらず。四維張らざれば、國乃ち滅亡す。
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『管子』五輔曰く、壙を實たし虛を墾き田疇し、墻屋を修むれば、則ち國家富む。飲食を節し、衣服を撙すれば、則ち財用足る。賢良を舉げ、功勞に務め、德惠を布けば、則ち賢人進む。姦人を逐い、詐偽を詰り、讒慝を去れば、則ち姦人止む。飢饉を修め、災害を救い、罷露を賑わせば、則ち國家定まる。明王の務は、本事を強くし、無用を去るに在り、然る後に民をして富ましむ可し。賢人を論じ、有能を用いて、民をして治めしむ可し。稅斂を薄くし、民に苟くもする毋く、待つに忠愛を以てして、民をして親しましむ可し。三つの者は、霸王の事なり。事に本有り、而して仁義は其の要なり。今工は以て巧なり、而して民の備用に足らざる者は、其の悅び玩好に在ればなり。農は以て勞す、而して天下飢うる者は、其の悅び珍怪に在り、方丈前に陳ぬればなり。女は以て巧なり、而して天下寒き者は、其の悅び文繡に在ればなり。是の故に博帶は棃かれ大袂は列たれ、文繡は染められ、刻鏤は削られ、雕琢は采られ、關は幾して征せず、市して稅せず。古の良工は、其の知巧を勞して以て玩好を為さず。是の故に無用の物は、法を守る者は失わず。