韓非子 / 有度第六
人主釋法用私,則上下不别矣。
新字:人主釈法用私,則上下不别矣。
書き下し
人主、法を釋てて私を用うれば、則ち上下別たず。
現代語訳
君主が法を捨てて私的な情を用いれば、上下の秩序が区別できなくなる。
解説
人の上に立つ者が定められた決まりを捨てて、その場の気分や個人的な好みで物事を決めるようになると、上の立場と下の立場の区別さえあいまいになってしまう、という警告です。決まりに従って判断していれば、誰の目にも「なぜそう決まったか」がはっきり分かりますが、気分次第で判断が変わるようになると、下の者は何を基準に動けばよいのか分からなくなり、結局は声の大きい者や気に入られた者が実権を握るようになってしまいます。これは会社の上司だけでなく、家庭で親がその日の機嫌次第で叱ったり許したりする場合にも当てはまります。子どもは何が良くて何が悪いのか分からなくなり、親の顔色ばかりうかがうようになるでしょう。決まりに基づいてぶれずに判断する姿勢こそが、上に立つ者の言葉に重みを持たせ、秩序を保つ土台になるのです。
この章句が説くこと
朝令暮改公私混同組織秩序ルールの形骸化一貫性
関連する章句
-
『韓非子』亡徵第十五好みて智を以て法を矯め、時に私を以て公に雑え、法禁變易し、號令数々下る者は、亡ぶ可きなり。
-
『韓非子』飾邪第十九夫れ常法を舎てて私意に従わば、則ち臣下智能を飾る。臣下智能を飾らば、則ち法禁立たず。
-
説苑・政理武王、太公に問いて曰く、「國を為めて數々法令を更むる者は何ぞや。」太公曰く、「國を為めて數々法令を更むる者は、法を法とせず、其の善しとする所を以て法と為す者なり。故に令出でて亂れ、亂るれば則ち更めて法を為す。是を以て其の法令數々更まるなり。」
-
『韓非子』解老第二十工人は数々業を變ずれば則ち其の功を失い、...大國を治めて数々法を變ずれば、則ち民之に苦しむ。
-
『韓非子』制分第五十五法定まるも慧に任ずればなり。法を釋てて慧に任ずれば、則ち事を受くる者安んぞ其の務めを得ん。
-
『韓非子』安危第二十五號令は、國の舟車なり。安ければ則ち智廉生じ、危うければ則ち爭鄙起る。