韓非子 / 難言第三
㹅微說約,徑省而不飾,則見以爲劌而不辯;激急親近,探知人情,則見以爲譖而不讓;閎大廣博,妙遠不測,則見以爲夸而無用;家計小談,以具數言,則見以爲陋;言而近世,辭不悖逆,則見以爲貪生而諛上;
新字:㹅微説約,径省而不飾,則見以為劌而不弁;激急親近,探知人情,則見以為譖而不譲;閎大広博,妙遠不測,則見以為夸而無用;家計小談,以具数言,則見以為陋;言而近世,辞不悖逆,則見以為貪生而諛上;
書き下し
㹅微說約、徑省にして飾らざれば、則ち見て以て劌(けい)にして辯ならずと爲す。激急親近、人情を探知すれば、則ち見て以て譖(そし)りて讓らずと爲す。閎大廣博、妙遠にして測られざれば、則ち見て以て夸(ほこ)りて用無しと爲す。家計小談、具數を以て言へば、則ち見て以て陋(ろう)と爲す。言ひて世に近く、辭悖逆せざれば、則ち見て以て生を貪りて上に諛(へつら)ふと爲す。
現代語訳
要点をまとめて簡潔に説き、無駄を省いて飾らなければ、「そっけなくて弁が立たない」と見られる。熱心に食い下がって相手の心中を探れば、「出過ぎていて遠慮がない」と見られる。話が壮大で広く、奥深くて測りがたければ、「大言壮語で役に立たない」と見られる。家計のような小さな話を数字を挙げて具体的に言えば、「卑俗だ」と見られる。世間並みのことを言い、言葉が相手に逆らわなければ、「命惜しさに上役へ媚びている」と見られる。
解説
「家計のような細かい話を持ち出し、こまごまとした数字を並べて語ると、聞く側からは『みみっちい、器の小さい話だ』と見なされてしまう」という戒めです。日々の出入りの数字を細かく把握し、無駄を省く工夫をすることは、家計をやりくりする主婦や、店を切り盛りする人にとって欠かせない務めです。けれども、そのことばかりを人前で語り続けると、大きな方向を見据える力がないと誤解されてしまいます。人の上に立つ人ほど、細かな数字への目配りと、それを踏まえた大きな判断を語り分ける言葉を持つ必要があります。数字の話は場をわきまえてこそ、信頼を得る材料になるのです。
この章句が説くこと
KPIコスト管理ミクロマクロ器量マネジメント
関連する章句
-
『韓非子』二柄第七人主将に姦を禁ぜんと欲せんとすれば、則ち刑名を審合せよとは、言と事となり。
-
『韓非子』外儲說左上第三十二宋人に燕王の為に棘刺の端を以て母猴を為らんと請う者有り。...王因て囚えて之を問うに、果して妄なり。
-
『韓非子』主道第五功其の事に當り、事其の言に當れば、則ち賞し、功其の事に當らず、事其の言に當らざれば、則ち誅す。
-
『韓非子』八經第四十八有道の主は、言を聴きて、其の用を督し、其の功を課す、功課して賞罰生ず、故に無用の辯は朝に留らず。
-
歎異抄・第十二条たとい自余の教法は勝れたりとも、自らがためには器量及ばざれば、つとめがたし。 我も人も生死を離れんことこそ諸仏の御本意にておわしませば、御妨げあるべからず」とて、にくい気せずは、誰の人かありて仇をなすべきや。
-
人物志・接識故に一流の人は、能く一流の善を識る。二流の人は、能く二流の美を識る。