韓非子 / 初見秦第一
夫一人奮死可以對十,十可以對百,百可以對千,千可以對萬,萬可以尅天下矣。
新字:夫一人奮死可以対十,十可以対百,百可以対千,千可以対万,万可以尅天下矣。
書き下し
夫れ一人奮死すれば以て十に対すべく、十は以て百に対すべく、百は以て千に対すべく、千は以て万に対すべく、万は以て天下に克つべし。
現代語訳
そもそも一人が奮って死を恐れずに戦えば十人に対抗でき、十人なら百人に、百人なら千人に、千人なら万人に対抗でき、万人がそうなれば天下に打ち勝つことができる。
解説
死を恐れずに戦う者が一人いれば十人に当たり、それが万人になれば天下を取れる、と数を重ねて畳みかける句です。前の段で、秦の民が賞罰の仕組みによって進んで死地に向かうと述べたのを受け、その力が積み上がれば天下統一も可能だと秦王に説いています。遊説の文らしく、数字を段階的に大きくして聞き手の想像を広げる修辞が使われています。組織でも、本気で動く一人の力は何倍にもなり、それが連鎖すると全体の力が桁違いに変わります。人数を増やすより、一人ひとりが本気になれる条件を整えるほうが、結果として大きな力を生むのです。
この章句が説くこと
組織力奮死士気パフォーマンスモチベーション秦
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李衛公問対・卷下所謂朝の気鋭しとは、時刻を限りて言ふに非ざるなり。一日の始末を挙げて喩へと為すなり。凡そ三たび鼓して、敵衰へず竭(つ)きざれば、則ち安んぞ能く必ず之をして惰帰せしめんや。蓋し学者徒らに空文を謂ひて、敵の誘ふ所と為る。苟も之を奪ふの理を悟らば、則ち兵任ずべし。」太宗曰く、「卿嘗て言ふ、李勣兵法を能くすと。久しく用ふべきや否や。然れども朕の控御に非ざれば、則ち用ふべからざるなり。他日太子治、若何(いかん)ぞ之を御せん。」靖曰く、「陛下の為に計るに、勣を黜(しりぞ)け、太子をして復た之を用ひしむるに若くは莫し。則ち必ず恩に感じて報いんことを図らん。理に於いて何ぞ損せんや。」太宗曰く、「善し。朕疑ひ無し。」太宗曰く、「李勣若し長孫無忌と共に国政を掌らば、他日如何。」靖曰く、「勣は忠義なり、臣保任すべきなり。無忌は佐命の大功あり、陛下肺腑の親を以て、之に輔相を委ぬ。然れども外貌は士に下り、内実は賢を嫉む。故に尉遅敬徳、面(まのあ)たり其の短を折(くじ)き、遂に引退す。侯君集は其の旧を忘るるを恨み、因りて以て逆を犯す。皆無忌其の然るを致すなり。陛下詢(と)ひて臣に及ぶ、臣敢へて其の説を避けず。」太宗曰く、「泄らす勿かれ、朕徐ろに其の処置を思はん。」太宗曰く、「漢の高祖能く将に将たり、其の後韓・彭誅せられ、蕭何獄に下る、何の故に此くの如きや。」靖曰く、「臣劉・項を観るに、皆将に将たるの君に非ず。秦の亡ぶるに当たりてや、張良本韓の為に仇に報ゆ。陳平・韓信は皆楚の用ひざるを怨む、故に漢の勢を仮りて、自ら奮ふのみ。蕭・曹・樊・灌に至りては、悉く亡命に由る。高祖之に因りて以て天下を得たり。設(も)し六国の後をして復た立たしめば、人人各其の旧を懐はん。則ち能く将に将たるの才有りと雖も、豈に漢の用と為らんや。臣謂(おも)へらく漢の天下を得たるは、張良の箸を借るの謀、蕭何の漕輓の功に由るなり。此を以て之を言へば、韓・彭の誅せらるると、范増の用ひられざると、其の事同じきなり。臣故に謂ふ、劉・項は皆将に将たるの君に非ずと。」
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