韓非子 / 顯學第五十
夫冰炭不同器而久、寒暑不兼時而至、雑反之學不両立而治。
新字:夫冰炭不同器而久、寒暑不兼時而至、雑反之学不両立而治。
書き下し
夫れ冰炭は器を同じくして久しからず、寒暑は時を兼ねて至らず、雑反の學は兩立して治まらず。
現代語訳
氷と炭は同じ器に長く共存できず、寒さと暑さは同時に訪れない。矛盾する学説が両立して国が治まることはない。
解説
氷と炭は同じ器に入れておけば長くは持ちませんし、寒さと暑さが同時に訪れることもありません。同じように、食い違う教えや方針を両方とも取り入れようとすれば、世の中はうまく治まらないと説いています。家庭でも会社でも「大胆に挑戦しなさい」と言いながら「失敗は一切許さない」と求めるなど、矛盾した言いつけを同時に課せば、下の者はどちらを信じてよいか分からず動けなくなります。親が子どもに言うことを場面によってころころ変えたり、職場で方針が朝令暮改になったりするのも同じことです。人の上に立つ者は、筋の通った一つの考え方を示し、それを守り続けること。それができて初めて、周りの人が安心して力を発揮できるのだと、この章句は教えてくれます。
この章句が説くこと
バリュー企業理念一貫性ビジョン組織の混乱
関連する章句
-
老子・第25章物有り混成し、天地に先だちて生ず。寂たり寥たり、独立して改まらず、周行して殆うからず、以て天下の母と為すべし。吾れ其の名を知らず、之に字して道と曰い、強いて之が名を為して大と曰う。大なれば曰く逝き、逝けば曰く遠く、遠ければ曰く反る。故に道は大、天は大、地は大、王も亦た大なり。域中に四大有りて、王は其の一に居る。人は地に法り、地は天に法り、天は道に法り、道は自然に法る。
-
『韓非子』南面第十八信ぜざる者に罪有り、事に功有る者を賞せざれば、則ち群臣敢えて言を飾りて以て主を惽くらます莫し。主道は、人臣をして、前言後に復せず、後言前に復せざらしめ、事に功有りと雖も、必ず其の罪に伏せしむ。之を任下と謂う。
-
『韓非子』外儲説右下第三十五夫れ賞は之を勸むる所以なるに、而も毀存し、罰は之を禁ずる所以なるに、而も譽れ加わる。民中立して由る所知らず。
-
老子・第10章営魄を載せて一を抱く、能く離るること無からんか。気を専らにして柔を致す、能く嬰児ならんか。玄覧を滌除す、能く疵無からんか。民を愛し国を治む、能く無為ならんか。天門開闔す、能く雌たらんか。明白四達す、能く無知ならんか。之を生じ之を畜い、生じて有せず、為して恃まず、長じて宰せず。是を玄徳と謂う。
-
論語・雍也篇季氏、閔子騫をして費の宰たらしむ。閔子騫曰く、「善く我が為に辞せよ。如し我を復たびする者有らば、則ち吾必ず汶の上に在らん。」
-
尚書・咸有一德徳は惟れ一なれば、動くとして吉ならざる罔く、徳二三なれば、動くとして凶ならざる罔し。