格言聯璧 / 悖凶類・利を輕んずるの一念
文繡充於室,而攘取人之敝裘,終必自喪其文繡。 天下無窮大好事,皆由於輕利之一念;利一輕,則事事悉屬天理;為聖為賢,從此進基。 天下無窮不肖事,皆由於重利之一念;利一重,則念念皆違人心,為盜為跖從此直入。
新字:文繍充於室,而攘取人之敝裘,終必自喪其文繍。 天下無窮大好事,皆由於軽利之一念;利一軽,則事事悉属天理;為聖為賢,従此進基。 天下無窮不肖事,皆由於重利之一念;利一重,則念念皆違人心,為盗為跖従此直入。
書き下し
文繡室に充ちて、人の敝裘を攘み取れば、終に必ず自ら其の文繡を喪ふ。 天下無窮の大好事は、皆利を輕んずるの一念に由る。利一たび輕ければ、則ち事事悉く天理に屬す。聖と為り賢と為る、此れより基に進む。 天下無窮の不肖の事は、皆利を重んずるの一念に由る。利一たび重ければ、則ち念念皆人心に違ふ。盜と為り跖と為る、此れより直ちに入る。
現代語訳
美しい刺繍の衣服を部屋いっぱいに持ちながら、人の破れた皮衣まで奪い取るような者は、最後には必ず自分の刺繍の衣服を失います。 天下の数限りない立派な事は、すべて利を軽んじるという一つの思いから生まれます。利を一たび軽んじれば、することなすことがすべて天理にかないます。聖人となり賢人となるのも、ここから土台を築いて進むのです。 天下の数限りない愚かな事は、すべて利を重んじるという一つの思いから生まれます。利を一たび重んじれば、思うことがみな人の心に背きます。盗人となり盗跖(古代の大盗賊)となるのも、ここからまっすぐ入っていくのです。
解説
最初の句は前の単位の膏粱の句と対になり、衣食の両面から、持てる者が貧しい者からさらに奪う愚かさを戒めます。続く長い対句が本題で、善と悪の分かれ目を、利を軽んじるか重んじるかの一念に求めます。聖人賢人への道も、盗跖への道も、入口は同じ一つの思いにあるというのです。盗跖は『荘子』などに登場する伝説的な大盗賊で、悪人の代表です。『孟子』が舜と跖の分かれ目を利と善の間に見たことと響き合う発想です。仕事の判断で迷ったとき、自分は今、利を重く見ているか軽く見ているかと問い直すだけで、見える景色が変わることがあります。
この章句が説くこと
義利天理処世善悪修身
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