格言聯璧 / 悖凶類・一命の士も心を愛物に存す
一命之士,苟存心於愛物,於人必有所濟。 無用之人,苟存心於利己,於人必有所害。 膏粱積於家,而剝削人之糠覆,終必自亡其膏粱。
新字:一命之士,苟存心於愛物,於人必有所済。 無用之人,苟存心於利己,於人必有所害。 膏粱積於家,而剥削人之糠覆,終必自亡其膏粱。
書き下し
一命の士も、苟くも心を物を愛するに存すれば、人に於いて必ず濟ふ所有り。 無用の人も、苟くも心を己を利するに存すれば、人に於いて必ず害する所有り。 膏粱家に積みて、人の糠覆を剝削すれば、終に必ず自ら其の膏粱を亡ふ。
現代語訳
最も低い位の役人であっても、もし物をいつくしむ心を持っていれば、人に対して必ず救うところがあります。 役に立たない人であっても、もし自分を利する心を持っていれば、人に対して必ず害をなすところがあります。 ごちそうを家に積み上げながら、人の糠のような粗末な食べ物まで削り取るような者は、最後には必ず自分のごちそうを失います。
解説
前半の対句の一句目は、北宋の程明道の言葉「一命の士、苟も心を愛物に存すれば、人に於て必ず濟ふ所有り」を踏まえたものです。一命は最下級の官位のことで、地位が低くても心がけ次第で人を救えると説きます。これに対して、役に立たない人でも利己心を持てば必ず人を害すると付け加え、力の大小ではなく心の向きが結果を決めると示しています。最後の句は次の単位の文繡の句と対になり、ぜいたくな食事を積み上げながら貧しい人の粗末な食べ物まで奪う者は、結局自分の財を失うと戒めます。膏粱は脂ののった肉とよい穀物、つまりごちそうのことです。立場が小さくても人の役に立つ心がけは持てるという励ましとして読めます。
この章句が説くこと
愛物利己処世善悪奢侈
関連する章句
-
『呻吟語』内篇・修身・寧ろ禍あるも惡を為すを肯んぜず善なる者は必ずしも福ならず、惡なる者は必ずしも禍ならず。君子は稔に之を知る。寧ろ禍あるも惡を為すを肯んぜず。忠直なる者は窮し、諛佞なる者は通ず。君子は稔に之を知る。寧ろ窮するも佞を為すを肯んぜず。但だ理に當然有るを知るのみに非ず、亦た其の心に已む容からざる所有るのみ。
-
『呻吟語』外篇・人情・死亡の時人を欺き得ず人己の善を說けば則ち喜び、人己の過ちを說けば則ち怒る。自家の善惡は自家真に知る。禍敗の時を待たば人を欺き得ず。人體の實を說けば則ち喜び、人體の虛を說けば則ち怒る。自家の病痛は自家獨り覺ゆ。死亡の時に到らば人を欺き得ず。
-
『正法眼蔵随聞記』巻四文に云く、ほめて白品の中にあるを善と云ふ、そしりて黒品の中におくを悪と云ふと、亦云く、苦を受くべきを悪と云ふ、楽をまねくべきを善と云ふと、かくの如く子細に分別して、真実の善を見て行し、真実の悪を見てすつべきなり、僧は清浄の中より来れるものなれば、人の欲を起すまじきものを以てよしとし、きよきとするなり、示して云く、
-
『正法眼蔵随聞記』巻四示して云く、善悪と云ふこと定め難し、世間の人は綾羅錦繡をきたるをよしと云ふ、麁布糞掃衣をわるしと云ふ、仏法には此れをよしとし、清しとし、金銀錦綾をわるしとし、けがれたりとす、かくの如く、一切のことにわたりて皆然り、予が如きも、聊か韻声をとゝのへ、文字をかきすぐるゝを、俗人等は尋常ならぬことに云もあり、亦有人は出家学道の身としてかくの如きのこと知れるとそしる人もあり、いづれをか定めて善として取り、悪としてすつへきぞ、
-
『呻吟語』内篇・修身・惡を為すに勉強無く、善を為すに自然無し惡を為すには再び個の勉強底沒く、善を為すには再び個の自然底沒し。學者此の念頭を勘破せば、寧ぞ愧ぢ奮はざらんや。
-
『呻吟語』外篇・人情・鬼神に罪を得る者人の善を聞きて之を掩覆し、或いは文致して以て其の心を誣ふ。人の過ちを聞きて之を播揚し、或いは枝葉して以て其の罪を多くす。此れ皆な鬼神に罪を得る者なり。吾が黨之を戒めよ。