格言聯璧 / 從政類・其の實に居り其の名に居らず
士大夫濟人利物,宜居其實,不宜居其名,居其名則德損。 士大夫憂國為民,當有其心,不當有其語,有其語則毀來。 以處女之自愛者愛身,以嚴父之教子者教士。
新字:士大夫済人利物,宜居其実,不宜居其名,居其名則徳損。 士大夫憂国為民,当有其心,不当有其語,有其語則毀来。 以処女之自愛者愛身,以厳父之教子者教士。
書き下し
士大夫の人を濟ひ物を利するは、宜しく其の實に居るべく、其の名に居るべからず、其の名に居れば則ち德損ず。 士大夫の國を憂ひ民の為にするは、當に其の心有るべく、當に其の語有るべからず、其の語有れば則ち毀來る。 處女の自ら愛する者を以て身を愛し、嚴父の子を教ふる者を以て士を教ふ。
現代語訳
士大夫が人を救い世の役に立つときは、その実を取るべきで、その名を取るべきではありません。名を取れば徳が損なわれます。 士大夫が国を憂い民のために尽くすときは、その心を持つべきで、それを口にするべきではありません。口にすれば非難がやってきます。 乙女が自分を大切にするように自分の身を大切にし、厳しい父が子を教えるように人々を教えます。
解説
前の二行は、善行と憂国の二つについて、実と名、心と語を対にした句です。人助けは実を取って名を求めない、国を思う気持ちは心に持って口に出さない、という点で共通しています。名を求めると徳が減り、言葉にすると人のそしりを招くというのは、善行が自己宣伝に変わる危うさを見抜いた言葉です。三行目は身の守り方と人の教え方を、処女と厳父の二つのたとえで示します。士は、ここでは教えを受ける人々のことと読めます。社会への貢献を声高に語りたくなるときほど、黙って続けることの重みを思い出させる一則です。

人生を、一行の式にしてみた。
志×積×時×憤÷(1+執)+命。古典から導いた式『人生の方程式』と、二十四の悩みに古典が答える『人生の教科書』(PDF)、師導の全機能1か月がセットで700円です。
本の中身を見るこの章句が説くこと
謙虚治政名実修身教育
関連する章句
-
『長短経』論士易伝に云わずや『上位に居るも、未だ其の実を得ず』と。故に其の実無くして其の名を喜ぶ者は削られ、其の徳無くして其の福を望む者は約せられ、其の巧無くして其の禄を受くる者は辱められ、禍い必ず掘らる。故に曰く『功を矜れば立たず、虚願は至らず』と。此れ皆な其の名を誇り、華にして其の実徳無きなり。是を以て堯に九佐有り、舜に十友有り、禹に五丞有り、湯に三輔有り。古より今に及ぶまで、能く虚しく名を天下に成す者は有ること無し。是を以て君王は亟しば問うを羞ずる無く、下学を愧じずして、其の道を成す。老子曰く『貴しと雖も、必ず賤を以て本と為し、高しと雖も、必ず下を以て基と為す』と。是を以て侯王は孤・寡・不穀と称す。夫れ孤・寡なる者は、困賤下位の者なり。而るに侯王之を以て謂う。豈に人に下りて士を尊貴するに非ずや。夫れ堯は舜に伝え、舜は禹に伝え、周の成王は周公旦に任ず。而して世世名を称するは、実に以て士の貴きを明らかにするなり」と。〕
-
『慎思録』巻之五学者は当に道学の実を勤むべし。好んで道学の名を立つべからず。名其の実に称はずして、一時の虚誉を掠め取るは、恥づべきの甚だしきなり。且つ自負して以て経術に専一なりと為すと雖も、往往訓詁の習ひに止まりて、未だ以て致知の学と為すに足らず。此を以て自ら矜高を為して、人を嫚罵し、顔を抗げて好んで人の師と為る。方に其の量を知らずと謂ふべし。身後に至れば、則ち自ら公論有りて、其の良拙と真偽とを掩ふこと能はず。古語に曰く、之を要するに死の日の後、是非乃ち定まる、と。信なるかな是の言や。恥づべきの甚だしきなり。
-
春秋繁露・『春秋繁露』郊事對第七十一・名と実が合わない供え物鶩は鳧に非ず、鳧は鶩に非ざるなり。臣聞く、孔子太廟に入りて、事毎に問うは、慎みの至りなりと。陛下祭に躬ら親しみ、斎戒沐浴して、以て宗廟を承け、甚だ敬い謹む。奈何ぞ鳧を以て鶩に当て、鶩を鳧に当て、名実相応ぜずして、以て太廟を承けんや。亦た称わざるならずや。臣仲舒愚かなれども以て不可と為す。
-
論語・雍也篇子曰く、觚、觚ならず。觚ならんや、觚ならんや。
-
言志四録・言志耋録 第二百六十条 名に因りて実を責む人事、外変ぜずして内変ずる者之れ有り。名変ぜずして実変ずる者之れ有り。政に従ふ者は、宜しく名に因りて以て其の実を責め、外に就きて以て諸を内に求むべくして可なり。
-
言志四録・言志晩録 第八十九条 名を顧みて実を責む凡そ士君子たる者は、今皆武士と称す。宜しく自ら其の名を顧みて以て其の実を責め、其の職を務めて以て其の名に副ふべし。