格言聯璧 / 接物類・己の性は逆法を用ゐて制す
不近人情,舉足盡是危機。 不休物情,一生俱成夢境。 己性不可任,當用逆法制之,其道在一忍字。 人性不可拂,當用順法調之,其道在一恕字。
新字:不近人情,舉足尽是危機。 不休物情,一生倶成夢境。 己性不可任,当用逆法制之,其道在一忍字。 人性不可払,当用順法調之,其道在一恕字。
書き下し
人情に近からざれば、足を舉ぐるも盡く是れ危機なり。 物情を體せざれば、一生俱に夢境と成る。 己の性は任すべからず、當に逆法を用ゐて之を制すべし、其の道は一の忍の字に在り。 人の性は拂ふべからず、當に順法を用ゐて之を調ふべし、其の道は一の恕の字に在り。
現代語訳
人情に寄り添わなければ、足を踏み出すたびにすべてが危険になります。 物事の実情を体得しなければ、一生がすべて夢の中の出来事のように空しくなります。 自分の性分は、そのままにまかせてはいけません。逆らう方法で抑えるべきで、その道は「忍」の一字にあります。 人の性分は、逆らってはいけません。沿う方法で整えるべきで、その道は「恕」の一字にあります。
解説
前の対句は、人情と物情、つまり人の気持ちと物事の実情に通じることの大切さを説きます。人情を知らなければ一歩ごとに危うく、物情を知らなければ一生が空回りするというのです。底本は二句目の「體」を「休」に作りますが、前の句との対から「體」と見て読みました。後の対句がこの則の中心で、自分の性分には逆らって忍で抑え、人の性分には沿って恕で整えよと、自分と人とで扱いを正反対にします。恕は、論語で孔子が一生行うべき一字として挙げた、自分が望まないことを人にしない思いやりです。自分には厳しく、人には寛くという接物類の考えを、忍と恕の二字にまとめた形です。人を変えようとして疲れたときに、思い出したい言葉です。
この章句が説くこと
忍恕接物克己人情
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