格言聯璧 / 存養類・才有りて性緩なるは定めて大才に屬す
有才而性緩,定屬大才。 有智而氣和,斯為大智。 氣忌盛,心忌滿,才忌露。 有作用者,器宇定是不凡。 有智慧者,才情決然不露。 意粗性躁,一事無成。心平氣和,千祥駢集。
新字:有才而性緩,定属大才。 有智而気和,斯為大智。 気忌盛,心忌満,才忌露。 有作用者,器宇定是不凡。 有智慧者,才情決然不露。 意粗性躁,一事無成。心平気和,千祥駢集。
書き下し
才有りて性緩なるは、定めて大才に屬す。 智有りて氣和するは、斯れ大智と爲す。 氣は盛んなるを忌み、心は滿つるを忌み、才は露はるるを忌む。 作用有る者は、器宇定めて是れ凡ならず。 智慧有る者は、才情決然として露はれず。 意粗く性躁なれば、一事も成る無し。心平かに氣和すれば、千祥駢び集る。
現代語訳
才能があって気性がゆったりしている人は、きっと大きな才能の持ち主です。 知恵があって気持ちが穏やかな人は、大きな知恵の持ち主です。 気は盛んすぎることを嫌い、心は満ちすぎることを嫌い、才能はむき出しになることを嫌います。 本当に働きのある人は、きっと器が並外れています。 知恵のある人は、才気を決して表に出しません。 考えが粗く気性がせっかちであれば、一つの事も成し遂げられません。心が平らかで気持ちが穏やかであれば、多くのめでたいことが並んで集まってきます。
解説
才と智を、それを包む気性と組み合わせて評価する聯です。才能があっても性急なら大才ではなく、知恵があっても気が荒ければ大智ではない、という見方が前提にあります。三行目の気・心・才の三つの忌みは、勢い、慢心、ひけらかしを戒めたものです。作用、つまり実際の働きがある人は器量が大きく、智慧がある人は才気を見せびらかさないと続きます。最後に粗さと躁がしさでは何も成らず、心平気和であれば吉祥が集まると結びます。有能な人ほど結論を急いだり、自分の賢さを示したくなったりするものですが、それを包む穏やかさこそが本当の力だと教えています。
この章句が説くこと
大才謙虚存養温和器量
関連する章句
-
『酔古堂剣掃』集峭・人に短有るは長を見はす所以作用有る者は、器宇定めて是れ凡ならず、受用有る者は、才情決然として露はれず。夫れ人に短有り、長を見はす所以なり。
-
『了凡四訓』謙德之效・謙なれば則ち教へを受くるに地有り此に由りて之を觀れば、頭を舉ぐること三尺に、決して神明有り。吉に趨き凶を避くるは、斷然として我に由る。須らく我をして心を存し行ひを制し、毫も罪を天地鬼神に得ずして、心を虛しくし己を屈し、天地鬼神をして、時時我を憐れましめて、方めて福を受くるの基有り。彼の氣盈つる者は、必ず遠器に非ず。縱ひ發するも亦た受用無し。稍や識見有るの士は、必ず自ら其の量を狹めて、自ら其の福を拒むに忍びざるなり。況んや謙なれば則ち教へを受くるに地有りて、善を取ること窮まり無し。尤も業を修むる者の必ず少くべからざる所の者なり。
-
葉隠・聞書第一少し理窟(りくつ)などを合点(がてん)したる時は、頓(やが)て高慢(こうまん)して、我今の世間に合はぬ生附(うまれつき)などと云ひて、我が上(うえ)あらじと思ふは、天罰あるべきなり。何様(いかよう)の能事(のうじ)持ちたりとも、人の好かぬ者は役に立たず。御用に立つ事、奉公する事には好きて、随分(ずいぶん)へりくだり、朋輩(ほうばい)の下に居るを悦ぶ心入(こころいれ)の者は、諸人(しょにん)嫌はぬものなり。「さてさて振(ふ)りある秘蔵(ひぞう)の者共(ものども)。」
-
史記 老子韓非列伝老子は、楚の苦県厲郷曲仁里の人なり。姓は李氏、名は耳、字は耼、周の守藏室の史なり。孔子、周に適き、将に礼を老子に問はんとす。老子曰く、「子の言ふ所の者は、其の人と骨と皆已に朽つ。独り其の言在るのみ。且つ君子は其の時を得ば則ち駕し、其の時を得ざれば則ち蓬累して行く。吾之を聞く、良賈は深く藏して虚しきが若く、君子は盛徳あるも容貌は愚なるが若し、と。子の驕気と多欲、態色と淫志を去れ。是れ皆子の身に益無し。吾が以て子に告ぐる所は、是くの若きのみ」と。孔子去り、弟子に謂ひて曰く、「鳥は、吾其の能く飛ぶを知る。魚は、吾其の能く游ぐを知る。獣は、吾其の能く走るを知る。走る者には以て罔を為す可く、游ぐ者には以て綸を為す可く、飛ぶ者には以て矰を為す可し。龍に至りては、吾其の風雲に乗りて天に上るを知る能はず。吾今日老子を見るに、其れ猶ほ龍のごときか」と。
-
史記 管晏列伝晏子斉の相たり。出づ。其の御の妻、門間よりして其の夫を闚ふ。其の夫、相の御を為して、大蓋を擁し、駟馬に策ち、意気揚揚として甚だ自ら得たるなり。既にして帰る。其の妻去らんことを請ふ。夫其の故を問ふ。妻曰く、「晏子の長けは六尺に満たずして、身は斉国に相たり、名は諸侯に顕はる。今妾其の出づるを覩るに、志念深く、常に自ら下る有る者なり。今子は長け八尺、乃ち人の僕御為り、然るに子の意は自ら以て足れりと為す。妾是の以に去らんことを求むるなり」と。其の後夫自ら抑損す。晏子怪しみて之を問ふ。御実を以て対ふ。晏子薦めて大夫と為す。
-
老子・第8章上善は水の若し。水は善く万物を利して争わず、衆人の悪む所に処る。故に道に幾し。居は地を善しとし、心は淵を善しとし、与は仁を善しとし、言は信を善しとし、正は治を善しとし、事は能を善しとし、動は時を善しとす。夫れ唯だ争わず、故に尤め無し。