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十善法語 / 巻第十二・不邪見戒之下

一ノ事緣ヲ云ハ。晉書等ニ。晉惠帝ノ時ニ。劉曜石勒等互ニ興テ。天下大ニ亂ル。ソノ頃佛圖澄西域ヨリ來テ。洛陽ニ赴ク。且ク葛陂ニ往テ。石勒カ大將郭黑略カ家ニ至ル。黑略素ヨリ法ニ信アリ。軍中ナカラ。此人ヲ家ニ請シテ。五戒ヲ受持ス。其後軍事アル每ニ。黑略預メ成敗ヲ決ス。石勒云。卿カ智慧中人ニ過ス。軍事ノ成敗ヲ見ルコト神ノ如クナルハ何故ソト。黑略答フ。此天ノ將軍ヲ助クル所以ナリ。我家ニ一人ノ沙門ヲ供養ス。此人非常ノ德有リ。前後軍事ノ成敗ヲ決スルハ。皆此人ノ言ト。石勒悅テ佛圖澄ニ見ユ。佛圖澄機ニ應シテ誘引ス。

新字:一ノ事縁ヲ云ハ。晋書等ニ。晋恵帝ノ時ニ。劉曜石勒等互ニ興テ。天下大ニ乱ル。ソノ頃仏図澄西域ヨリ来テ。洛陽ニ赴ク。且ク葛陂ニ往テ。石勒カ大将郭黒略カ家ニ至ル。黒略素ヨリ法ニ信アリ。軍中ナカラ。此人ヲ家ニ請シテ。五戒ヲ受持ス。其後軍事アル毎ニ。黒略預メ成敗ヲ決ス。石勒云。卿カ智慧中人ニ過ス。軍事ノ成敗ヲ見ルコト神ノ如クナルハ何故ソト。黒略答フ。此天ノ将軍ヲ助クル所以ナリ。我家ニ一人ノ沙門ヲ供養ス。此人非常ノ徳有リ。前後軍事ノ成敗ヲ決スルハ。皆此人ノ言ト。石勒悦テ仏図澄ニ見ユ。仏図澄機ニ応シテ誘引ス。

書き下し

一ノ事縁ヲ云ハ。晋書等ニ。晋恵帝ノ時ニ。劉曜石勒等互ニ興テ。天下大ニ乱ル。ソノ頃仏図澄西域ヨリ来テ。洛陽ニ赴ク。且ク葛陂ニ往テ。石勒カ大将郭黒略カ家ニ至ル。黒略素ヨリ法ニ信アリ。軍中ナカラ。此人ヲ家ニ請シテ。五戒ヲ受持ス。其後軍事アル毎ニ。黒略預メ成敗ヲ決ス。石勒云。卿カ智慧中人ニ過ス。軍事ノ成敗ヲ見ルコト神ノ如クナルハ何故ソト。黒略答フ。此天ノ将軍ヲ助クル所以ナリ。我家ニ一人ノ沙門ヲ供養ス。此人非常ノ徳有リ。前後軍事ノ成敗ヲ決スルハ。皆此人ノ言ト。石勒悅テ仏図澄ニ見ユ。仏図澄機ニ応シテ誘引ス。

現代語訳

一つの事例を言えば、晋書などに次のようにある。晋の恵帝の時に、劉曜や石勒などが互いに起こって、天下が大いに乱れた。その頃、仏図澄が西域から来て洛陽に向かった。しばらく葛陂に行き、石勒の大将郭黒略の家に至った。黒略はもともと仏法に信心があり、軍中にありながら、この人を家に招いて五戒を受けて保った。その後、軍事があるたびに、黒略はあらかじめ勝敗を言い当てた。石勒が言った。そなたの智慧は人並みを越えないのに、軍事の勝敗を見ることが神のようであるのはなぜか、と。黒略は答えた。これは天が将軍を助ける所以である。私の家に一人の沙門を供養している。この人には非常な徳がある。これまで軍事の勝敗を言い当てたのは、みなこの人の言葉である、と。石勒は喜んで仏図澄に会った。仏図澄は相手の機に応じて導いた。

解説

天地万物に道が現れるという話の実例として、仏図澄の逸話が引かれる。仏図澄は西域出身の僧で、五胡十六国の乱世に後趙の石勒・石虎の尊崇を受け、殺戮を戒めて多くの人命を救ったと晋書芸術伝や高僧伝に伝わる。郭黒略は自分の手柄にせず、勝敗を見通していたのは師の言葉だと正直に明かした。そのことが石勒と仏図澄を結びつけた。手柄を独り占めせず、知恵の出どころを明かす誠実さが、より大きな縁を開くことを示す話として読める。

この章句が説くこと

五戒誠実仏図澄石勒晋書

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