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十善法語 / 巻第九・不瞋恚戒

現今目前ニ虛空ト云モノアリテ。面白キシヤ。此虛空アリテ法ノ比況シ解シラルル。面白キシヤ。現今目前ニ山河大地ト云モノアリテ。面白キシヤ。此山河大地。虛空ノ中ニ安住シ起滅シテ。面白キシヤ。現今目前ニ衆生ト云モノアリテ。面白キシヤ。此衆生虛空ノ中ニ安住シ起滅シテ。面白キシヤ。此世界ニ此人間アル。空中ニ往來シ。元來根帶ナシ。空中ニ坐臥シテ自由ノ分ナシ。空中ニ天ヲ戴ク。此天空ニ浮テ元來根蒂ナシ。何ヤウニ迷ヲ重ネテモ。一念心ノ瞋恚生スヘキ理ナキシヤ。空中ニ地ヲ履ム。此地空ニ浮ヒテ元來根蔕ナシ。何ヤウニ迷ヲ累ネテモ。一念心ノ瞋恚生スヘキ理ナキシヤ。

新字:現今目前ニ虚空ト云モノアリテ。面白キシヤ。此虚空アリテ法ノ比況シ解シラルル。面白キシヤ。現今目前ニ山河大地ト云モノアリテ。面白キシヤ。此山河大地。虚空ノ中ニ安住シ起滅シテ。面白キシヤ。現今目前ニ衆生ト云モノアリテ。面白キシヤ。此衆生虚空ノ中ニ安住シ起滅シテ。面白キシヤ。此世界ニ此人間アル。空中ニ往来シ。元来根帯ナシ。空中ニ坐臥シテ自由ノ分ナシ。空中ニ天ヲ戴ク。此天空ニ浮テ元来根蒂ナシ。何ヤウニ迷ヲ重ネテモ。一念心ノ瞋恚生スヘキ理ナキシヤ。空中ニ地ヲ履ム。此地空ニ浮ヒテ元来根蔕ナシ。何ヤウニ迷ヲ累ネテモ。一念心ノ瞋恚生スヘキ理ナキシヤ。

書き下し

現今目前ニ虚空ト云モノアリテ。面白キシヤ。此虚空アリテ法ノ比況シ解シラルル。面白キシヤ。現今目前ニ山河大地ト云モノアリテ。面白キシヤ。此山河大地。虚空ノ中ニ安住シ起滅シテ。面白キシヤ。現今目前ニ衆生ト云モノアリテ。面白キシヤ。此衆生虚空ノ中ニ安住シ起滅シテ。面白キシヤ。此世界ニ此人間アル。空中ニ往来シ。元来根帯ナシ。空中ニ坐臥シテ自由ノ分ナシ。空中ニ天ヲ戴ク。此天空ニ浮テ元来根蒂ナシ。何ヤウニ迷ヲ重ネテモ。一念心ノ瞋恚生スヘキ理ナキシヤ。空中ニ地ヲ履ム。此地空ニ浮ヒテ元来根蔕ナシ。何ヤウニ迷ヲ累ネテモ。一念心ノ瞋恚生スヘキ理ナキシヤ。

現代語訳

今目の前に虚空というものがあって、面白いことである。この虚空があって、法が譬えとして解される。面白いことである。今目の前に山河大地というものがあって、面白いことである。この山河大地が、虚空の中に安住し起こり滅して、面白いことである。今目の前に衆生というものがあって、面白いことである。この衆生が、虚空の中に安住し起こり滅して、面白いことである。この世界にこの人間がいる。空中を往来し、元来根も蔕もない。空中に座り臥して、自由になる分がない。空中に天を戴く。この天は空に浮かんで、元来根も蔕もない。どのように迷いを重ねても、一念の心の瞋恚が生じるはずの道理はないのである。空中に地を踏む。この地は空に浮かんで、元来根も蔕もない。どのように迷いを重ねても、一念の心の瞋恚が生じるはずの道理はないのである。

解説

虚空を手がかりに怒りを溶かす段である。山河大地も衆生も、すべて虚空の中に安住し、起こっては滅していく。人は空中を行き来し、空中に座り、空に浮かぶ天を戴き、空に浮かぶ地を踏んでいて、どこにも根や蔕はない。そう見れば、どれほど迷いを重ねても怒りが生じる理由はない、と尊者は言う。足場のない所に立っているという感覚は不安にも通じるが、ここでは執着の足場を外して心を軽くする方向に使われている。怒りの根拠がどこにあるのかを探る視点になる。

この章句が説くこと

虚空根帯瞋恚起滅無常不瞋恚

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