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十善法語 / 巻第五・不綺語戒

此中麁相ニ憶念スル者ハ。上ノ身業ノ妄語ト混スヘシ。其差別ヲ知レ。他ヲ欺キ証サンカ爲ニ禮式ヲ踰ルハ。身ノ妄語ヲ犯ス。戯ト心ノ傲トニ因テ禮式ヲ踰ユル類カ。此戒ヲ犯スルシヤ。上ナル人カ下ノ衣服ヲ着シ。下ノ威儀ヲマネスル。此モ身綺ニ屬ス。古ニタトヒ習禮ノ時モ。主上ハ臣下ノ例ニハアルマシキト云類。實ニ十善ノ正規則ト云ヘキシヤ。明ノ武宗カ自ラ威武大將軍鎭國公朱壽ト名乘テ。諸國ヲ巡見ス。此類ハ甚シキコトシヤ。

新字:此中麁相ニ憶念スル者ハ。上ノ身業ノ妄語ト混スヘシ。其差別ヲ知レ。他ヲ欺キ証サンカ為ニ礼式ヲ踰ルハ。身ノ妄語ヲ犯ス。戯ト心ノ傲トニ因テ礼式ヲ踰ユル類カ。此戒ヲ犯スルシヤ。上ナル人カ下ノ衣服ヲ着シ。下ノ威儀ヲマネスル。此モ身綺ニ属ス。古ニタトヒ習礼ノ時モ。主上ハ臣下ノ例ニハアルマシキト云類。実ニ十善ノ正規則ト云ヘキシヤ。明ノ武宗カ自ラ威武大将軍鎮国公朱寿ト名乗テ。諸国ヲ巡見ス。此類ハ甚シキコトシヤ。

書き下し

此中麁相ニ憶念スル者ハ。上ノ身業ノ妄語ト混スヘシ。其差別ヲ知レ。他ヲ欺キ証サンカ為ニ礼式ヲ踰ルハ。身ノ妄語ヲ犯ス。戯ト心ノ傲トニ因テ礼式ヲ踰ユル類カ。此戒ヲ犯スルシヤ。上ナル人カ下ノ衣服ヲ着シ。下ノ威儀ヲマネスル。此モ身綺ニ属ス。古ニタトヒ習礼ノ時モ。主上ハ臣下ノ例ニハアルマシキト云類。実ニ十善ノ正規則ト云ヘキシヤ。明ノ武宗カ自ラ威武大将軍鎮国公朱寿ト名乗テ。諸国ヲ巡見ス。此類ハ甚シキコトシヤ。

現代語訳

このあたりを大ざっぱに考える者は、前に説いた身の行いの妄語と混同するだろう。その区別を知りなさい。他人を欺きだまそうとして礼式を越えるのは、身の妄語を犯すことである。戯れと心の驕りによって礼式を越える類が、この戒を犯すのである。上の人が下の者の衣服を着け、下の者の威儀を真似る、これも身綺に属する。昔、たとえ礼の稽古の時でも、主上は臣下の役にはつくべきでない、と言った類は、まことに十善の正しい規則と言うべきである。明の武宗が自ら威武大将軍鎮国公朱寿と名乗って諸国を巡り歩いた、このようなものは甚だしいことである。

解説

同じく分を越える行いでも、人を欺くためなら妄語、戯れや驕りからなら綺語、と尊者は動機で線を引く。さらに逆方向、上の者がわざと下の者の姿を真似るのも身綺だという。明の武宗(正徳帝)は自ら将軍の称号を名乗って遊び歩いたことで知られる皇帝で、その例として挙げられている。立場ある人が面白半分に役割を崩すと、周囲は何を基準にすればよいか分からなくなる。気さくさと、役割を軽んじることとの違いを考えさせる一節である。

この章句が説くこと

身綺妄語驕慢礼式明の武宗

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