人物志 / 體別
夫中庸之德,其質無名。故鹹而不鹻,淡而不𨣈,質而不縵,文而不繢;
新字:夫中庸之徳,其質無名。故鹹而不鹻,淡而不𨣈,質而不縵,文而不繢;
書き下し
夫れ中庸の徳は、其の質に名無し。故に鹹にして鹻ならず、淡にして𨣈ならず、質にして縵ならず、文にして繢ならず。
現代語訳
そもそも中庸の徳は、その素質に名づけようがない。だから塩気があっても苦くからくはなく、淡くても味気なくはなく、質朴であっても粗末ではなく、飾りがあってもけばけばしくはない。
解説
體別篇の冒頭で、中庸の徳を味と布の比喩で描く一節である。塩辛さはあってもえぐくはなく、淡くても味気なくはなく、質素でも粗末ではなく、彩りがあってもけばけばしくはない。どの性質も持ちながら、どれも行き過ぎないので、一語で名づけることができない、というのが「その質に名無し」の意味である。九徵篇で中和の質を「平淡無味」と呼んだことを、具体的な比喩で言い換えている。現代でも、良い上司や調整役は「あの人は何型」と一言で言いにくいことが多い。性格診断の型に人を当てはめたくなるとき、型に収まらない均衡そのものに価値があることを思い出させる言葉である。
関連する章句
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人物志・九徵中和の質は、必ず平淡にして味無し、故に能く五材を調成し、変化して節に応ず。
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人物志・九徵是の故に中庸の質は此の類に異なる。五常既に備はり、包むに澹味を以てす。五質内に充ち、五精外に章らかなり、是を以て目は五暉の光を彩る。故に曰く、物生じて形有り、形に神精有り。能く精神を知らば、則ち理を窮め性を尽くす。性の尽くす所は、九質の徴なり。然らば則ち平陂の質は神に在り、明暗の実は精に在り、勇怯の勢は筋に在り、彊弱の植は骨に在り、躁静の決は気に在り、惨懌の情は色に在り、衰正の形は儀に在り、態度の動は容に在り、緩急の状は言に在り。其の人と為りや、質素平澹、中叡外朗、筋勁く植固く、声清く色懌び、儀正しく容直く、
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人物志・體別能く威あり能く懷け、能く辨じ能く訥なり。變化方無く、達を以て節と為す。
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人物志・九徵是の故に德を兼ねて至る、之を中庸と謂ふ。中庸は、聖人の目なり。
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人物志・九徵凡そ人の質量は、中和最も貴し。
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中庸子曰く、「中庸は其れ至れるかな。民能くすること鮮(すく)なきこと久し」と。
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