囲炉夜話 / 第百五十三則・口を闔ぢて禍を防ぐ
神傳於目,而目則有胞,閉之可以養神也。 禍出於口,而口則有唇,闔之可以防禍也。
新字:神伝於目,而目則有胞,閉之可以養神也。 禍出於口,而口則有唇,闔之可以防禍也。
書き下し
神は目に傳はる、而して目には則ち胞有り、之を閉ぢて以て神を養ふ可きなり。 禍は口より出づ、而して口には則ち唇有り、之を闔ぢて以て禍を防ぐ可きなり。
現代語訳
精神は目に表れ出ますが、目にはまぶたがあるので、それを閉じれば精神を養うことができます。災いは口から出ますが、口には唇があるので、それを閉じれば災いを防ぐことができます。
解説
体のつくりに教えを読み取る対句です。神とは精神や気力のことで、それが目から外へ漏れ出ると考えられていました。胞はここではまぶたを指します。見るものが多すぎれば心は散るので、目を閉じる時間が気力を養うというのです。下の句は「禍は口より出づ」という古い戒めを踏まえ、唇という蓋が備わっているのは、閉じて災いを防ぐためだと言います。目と口は、開くためだけでなく閉じるための仕組みも持っているという発想が面白いところです。画面を見続け、発信し続ける今の暮らしでこそ、閉じる時間を意識して持ちたいものです。

人生を、一行の式にしてみた。
志×積×時×憤÷(1+執)+命。古典から導いた式『人生の方程式』と、二十四の悩みに古典が答える『人生の教科書』(PDF)、師導の全機能1か月がセットで700円です。
本の中身を見るこの章句が説くこと
養生慎言禍福修身沈黙
関連する章句
-
言志四録・言志録 第百八十九条 禍は口より出で病は口より入る人は最も当に口を慎むべし。口の職は二用を兼ぬ。言語を出だし、飲食を納るる、是れなり。言語を慎まざれば、以て禍を速くに足る。飲食を慎まざれば、以て病を致すに足る。諺に云ふ、「禍は口より出で、病は口より入る」と。
-
『格言聯璧』悖凶類・詩書を借りて戲謔するは聖を侮る行ひ垢づけども湔はず、德缺くれども補はずんば、天に對して豈に愧づる心無からんや。 人の欣賞に供へ、風月を煙花に儕しくす、是れを天を褻すと曰ふ。 我が機鋒を逞しくし、詩書を借りて以て戲謔す、是れを聖を侮ると名づく。 罪は天を褻すより大なるは莫く、惡は恥無きより大なるは莫く、過ちは言多きより大なるは莫し。
-
『格言聯璧』悖凶類・人の善を談ずるは膏沐よりも澤ふ言語の惡は、誣を造るより大なるは莫し。 行事の惡は、苛刻より大なるは莫し。 心術の惡は、深險より大なるは莫し。 人の善を談ずるは、膏沐よりも澤ふ。 人の惡を暴くは、戈矛よりも痛し。 厄に當たるの施しは、甘きこと時雨為り。
-
『酔古堂剣掃』集醒・聖人の言は簡なり神人の言は微、聖人の言は簡、賢人の言は明、眾人の言は多、小人の言は妄なり。
-
『格言聯璧』悖凶類・耳を洗ふも心は剖きて浣ふべし心を傷つくるの語は、陰冰よりも毒なり。 陰嚴積雨の險奇は、以て想ひて文境と為すべし、設けて心境と為すべからず。 華林映日の綺麗は、以て假りて文情と為すべし、以て世情と為すべからず。 巢父耳を洗ひて以て高きを鳴らす、予以為へらく耳は其の竇なり、其の言已に心に入れり、當に心を剖きて之を浣ふべし。
-
『酔古堂剣掃』集醒・人を甘んぜしむるの語人を甘んぜしむるの語は、多く其の是非を論ぜず。人を激するの語は、多く其の利害を顧みず。